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第4話

 「フライにするから開きにしといてくれ」 クーラーボックスをキッチンに置いて俺は冷蔵庫から冷やしておいたビールの缶を取り出す。 するとそれをめざとく見つけた日和が 「あー!飯前に飲むなよ!!」 と腕にぶら下がってきて飲むのを邪魔してくる。 「いいんだよ!明日は遅番だしゆっくり飲ませろよ」 ぷくぅ。と頬を膨らませて"怒っています"アピールも幼く見えて可愛らしい。 「酒飲みながらする料理ってなんか捗るんだよ」 「まだ何もしてねぇじゃん」 2人がけの小さなダイニングテーブルの椅子を1つ持ってきてそれを跨ぐように座り背もたれに腕を乗せビールを煽りながらアジを捌く日和を見ている。 俺は作るよりこうやって作ってもらう方が好きかなー。なんて思いながらその包丁捌きをじっとみる。 「あんまりみられると変に緊張する」 そう言う手元は緊張しているようには見えない。いつも通りの手慣れた手つきだ。 「お前ほんと捌くの上手くなったよな」 最初の頃なんか生魚触るだけでギャーギャー言ってたのに…。 「それにしてもお前なんであの大学入ったんだよ」 生魚に苦手意識を持っていた少年が進んで海洋生物の研究が盛んな大学に入るなんておかしな話だ。 「うーん、どこでも良かったんだよね」 手元をジッと見つめるその目はなんとなくそこをみていなくて俺の知らないどこか遠いところを見ているようだった。 こいつはたまにこんな顔をする。けど数秒後には何もなかったかのようにいつもの顔をする。 今だって。ほら。パッと顔をこちらに向けて 「一人暮らしがしたかったんだよね」 って。なんでもないように言う。

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