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第16話
「今日はどこに泊まるの?」
食べ終わった後狭いキッチンに2人で並んで洗い物をした。あたしは洗われた食器たちを拭いて指示された場所に戻す係。
「この辺宿とかないけど親戚が住んでるとか?」
コップを濯ぎながら聞くその手は水場で仕事でもしてるのかガサガサしていて顔はせっかく綺麗なのにそういうところ勿体無いな。と思って見てしまった。
「兄が住んでるし職場はわかるけど泊めてもらえるかわからない…。」
兄ももういい歳だ。自分たち家族には仕事が理由で急に引っ越すと言い出したがもしこっちにお付き合いしている人がいて同棲なんてしていたりしたら向こうが気にしない。と言ってきたってさすがに気まずすぎるだろう。
「こんな可愛い子がわざわざ会いに来てくれたら外にほっぽり出したりなんてしないって。」
こいつ。さっきから意外とこういうセリフ言ってくるのよね。もしかして天然タラシ??
「まぁ兄は優しいしきっと泊めてくれると思うけど」
「何か会いたくない理由でもあるの?」
最後の一個だった食器を流し終えてじっと不安そうにこちらを見つめてくる。
たしかに、会いたくない理由もある。けどそれは勝手なあたしの憶測で。きっとそうじゃないってこともわかってる。
「俺も、家族に会うの怖いよ。」
「え?」
静かに吐き出したその声が震えている気がした。
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