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No.16 情燋

 共に過ごせる時間は限られるのに、傘もささずにずぶ濡れか。  肌に張り付いて透けるTシャツが、乾いた瞳の奥に「独占欲」という火を灯した。  首を傾げ髪の雨を落としながら、陽射しのような笑顔が近づく。寒さに震える身体を抱きしめたら 「着物が濡れるよ、兄さん」 と冷えた指先が唇に触れた。

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