37 / 59

No.35 雷雨とかくれんぼ

「ひー降られた!」 鞄を抱え可愛らしく小走りで君が軒先に駆け寄る。柱の影に身を潜める私に、濡れて視界が狭い君は気が付かない。 「先生!僕原稿を頂きに…あれ居ない」 ザーという雨音に悲鳴が被る。 「逃げられた!」 書けぬものは書けぬ。だが原稿が真っ白であるうちは、私は君と会えないのだ。

ともだちにシェアしよう!