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No.36 一度きりの逢瀬

冷たい糸雨の降る午后、軒下に傘を持たない青年が一人。年代物の唐傘でよければと差出した手を青年は掴み、「中に入れてくれませんか? 少しでいいから」。 白い指先に赤みの差す頬。その身体が熱を欲していると一目でわかった。 あの日「また雨の夜に…」と聞こえた気がした。あれは夢だったのか。

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