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No.49 まるで驟雨

「雨雲が近づいています」と、地球を百周くらいしてから届いたのをおぼえている。僕は切りたての髪を、あなたは気に入りの着物を濡らされて、お互い散々だった。 「やみませんね」  たったひとり、この憂鬱を分かち合える見知らぬ人。  気難しく結んでいた唇をほんの少し綻ばせて、あなたが笑ったのだ。

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