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第3話

それからも彼は気紛れに俺を恋人のように優しく抱いては、勘違いするなとお金を置いていく。 彼はあの子と付き合っていて、世間的にみれば俺は浮気相手だけど、本当はあの子を傷つけないように優しく抱くための練習台で。 それでもまるで恋人のように抱いてくれる彼に歓喜する気持ちと、この上なく惨めだと彼を恨みそうになる気持ちが絶え間なく押し寄せてくるけど、結局それは自業自得で。 身動きできない自分とは相反して、お金は着実に貯まっていき、半年後を目標にしていた留学費用は、思いがけず早めに工面することができた。 すぐさま留学手続きを進めると、タイミング留学先の学校に留学枠が空いており良くあっという間に留学行きを決めることができた。 これも天の思し召しかもしれない。 アルバイトを辞め、唯一飲み仲間のバイト仲間にだけ留学を伝えた。 もともと留学行きを希望していたことを知っていたバイト仲間は、突然のことに驚きながらも頑張れよ、と応援してくれた。 彼とは相変わらずの仲で、気まぐれに呼ばれてはセックスをする。 もちろん留学のことは言っていない。 言ったところで興味はないだろうから。 でも彼から離れてしまうと思ったら、少しでも後悔したくないから、セックスの後、いつもは被っている布団から顔を出して彼を見た。 いつもと違う動きをした俺に彼は少しだけ驚いたようにこちらを見たが、やはりいつもと同じようにシャワーを浴び、お金を置いて出ていってしまった。 休学手続きのため久しぶりに大学に行くと、思わぬ人物から呼び止められた。 彼の恋人である、あの子だ。 彼が言うはずもないから知らないとは思うが、あの子から呼び止めると後ろめたさがある。 「先輩、さっき休学って、、、本当ですか。」 「ああ、そうだよ。留学するんだ。」 手続きしていたところを見ていたのか、サークルも辞めたからほとんど関係ないのに話しかけてくれるあの子は本当にいい子だ。 本当に彼とお似合いだ。 急なことで驚いて口を閉ざしてしまったあの子。 「このこと、あの人は知ってるんですか。」 「いや、言ってないよ。、、、ああ、言わなくて良いからね。」 興味ないだろうけど。なんて、何度となくよぎった思いが呪いのように反芻する。 「そういえば、彼と付き合うことになったんだって。おめでとう。サークル辞めた後に聞いたから、、、」 「付き合っていないです。俺のただの片思いです。あの人には好きな人がいるんだろうって思うんです。諦めたくないけど、あの人はその人がとても好きなんだろうって思うんです。」 辛そうに言うあの子。 付き合っていないなんて言っているが、彼はあの子のことが好きで、あの子も彼が好きで。 何かすれ違いがおきて辛い思いなんてしなくていい。 好きだった彼と、優しすぎる後輩に言ってやれることなんて一つしかない。 おわり

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