髪型オーケー、服装オーケー、表情もバッチリ。第一印象としてはクリア、なはず。ほんとに大丈夫だよな？ だって今日、父さんの新しい嫁とその息子がやってきてるんだ。 現在リビングで自己紹介中。 朝っぱらからソワソワ、ソワソワ。 今日が相手方との初顔合わせ。そして父さんは仕事の拠点が海外で、母さんもそれについてくっていうビックリ展開のせいで……実際のこれからは兄弟で暮らすことになるわけで……。性格合わなかったら気まずすぎるよ？！ うわぁぁぁ、そう思ったらキンチョーがぁぁ〜〜！天元突破してるわけ！！ なんかあっちからもガン見されてるし！ う、ちょっと気まずいなぁ……。 父さんも義母さんもなんでちょっとはこっちで過ごしてくれないの……せめて慣れるまで……いや、まぁお互い高校生だし確かに仲良くやれるとは思うけどさぁ……さぁ〜泣 「嘉風(よしか)、光貴くんに挨拶。」 「ぇ、ぁ、嘉風です。今日から義弟になります。仲良くしてください。よろしくね。」 にっこり、と擬音語がつきそうなほどの笑顔を作る。大丈夫、、多分……。 すると義兄、何故か席を立って俺に手を伸ばしてきた。いや、何事です？！ 「ん、」 ？！？！？！ 抱きつかれてますか俺？！どどどどうして？！？！あああ足！乗っかってこないで滑り込まないで？！向き合ってるから恋人かって体制なってるから？！てかなんかめっちゃ匂い嗅がれるんだけど俺なんか変？！ 「あああああの、あの「光貴、呼んで。」 「ぇ、ぁ、えと、光貴？あの、え、ま、え、ぁ、と、離して？」 父さんと義母さんは微笑ましいなぁって顔してないで助けて？！お願いよ？ 「ぃや。落ち着く…」 おおおお落ち着く？！どゆこと？！なんでカタコトなのこの人？！？！ 驚きすぎて俺パニックなんだけど？！あとこんな美形に抱きつかれてると変な気起こしそうでやめてほしい…… あぁでも悲しきかな。これから2人で同居なので気まずいことは出来ません。…よって、感情のまま無理やりひっぺがすのも、理性負けして無理やり襲うのも却下です、はい。 俺ゲイなんでちょっとキツいなぁこれ。いやぁあの、ご両親？カミングアウト済みなんだしちょっと助けて？！ 「ふふふ、びっくり。この子人間に対して興味そのものがないんだと思ってたのに。嘉風くんのことはすっかり気に入っちゃったのね。」 「うんうん、僕が自己紹介したの扉越しだし、口も利いてくれなかったんだよ……。」 「それなら私ももう何年もこの子の声聞いてなかったの〜、部屋からも全然出てこないし。」 なんて義母さんまでそんなことを言う。いやいや、いやいやいや、嘘でしょ？！義兄は引きこもりか何かなの？！まぁ、カタコトの理由は分かったけども！ 「もう、光貴〜？いい加減離れないと、嘉風くんに嫌われちゃうよ〜？」 おっとり告げる義母さん、ナイス援護！ と、思ったのだが。 「や。くっつく、嘉風、落ち着く。 …でも、嘉風、嫌い、、なる、の？」 俺の胸板にすりすりしていた義兄が顔を悲しそうに、というか今にも泣きそうになって目がウルウルしている。 「っ…！」 この人、美形なんだよ…っ…どちらかっていうと怜悧とか涼しげとかいう言葉が似合うその顔で、そんな感情剥き出しな顔されて。 断れるわけないだろぉぉぉぉぉ！！ うぁぁぁぁぁぁぁあああああ！！！！ 「嫌い、には、なり、ません。」 クッソ負けたぁぁぁぁぁあああ！！！ けど、でもさぁ、そんなパァァって破顔なんかされたらさ、無理だって。許すわそんなん。 あーうん、もう、いいさ。 「はぁ。あー、はいはい、よしよし。これからよろしく。」 大型犬だとでも思ってさ、なんとか頑張るよ、俺。 まじで理性が持つ気しねぇ！ つか微笑ましげな顔すんなそこ！ はぁ…前途多難です。