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第3話
部屋の前に着いたが、理一は困っていた。
鉄製の手すりを壊してしまう力だ。
部屋の電子キーとなっているカードを内ポケットから取り出してスキャンするなんてことできそうにない。
暴力的な本能が、扉ごと外せばいいと囁くが理一は無視する。
「あー、悪いんだけど、俺のブレザーの内ポケットにカードキー入ってるんで取ってもらってもいいですか?」
理一が聞くと、先ほどの事を思い出したのか一総は「あぁ」と言いながら、理一のブレザーではなく自分のブレザーからカードキーを取り出し、スキャンした。
――カチャリ
ロックが開いた。
「え?どういうことっすか?」
「…生徒会メンバーのカードキーは基本どの部屋のドアのロックも解除することができる。まあ、何かあったときに部屋に入れるためだ。」
プライバシーとかどうなっているんだ。理一は気になりはしたが気にしない事にした。
二人で部屋に入る。
通学カバンは今日は持って帰る事を諦めたので理一は手ぶらだ。
「先にシャワーでも浴びるか?」
一総が聞くが、理一は渋い顔をしている。
「一人で入るとたぶん、水道管破裂させるだけだと思うんですよね。一緒にシャワーとか初心者にはキツイんすけど、浴びないとまずいっすか?」
理一がおずおずと聞くと、一総は全くに気にしていないように返した。
「俺はどちらでもいいぞ。必要がないなら、寝室へ行くか。」
そう促され、二人は寝室へ入った。
寝室へ入ると理一はベッドへ腰を下ろし、一総を見上げる。
「そこの、チェストの2段目に手錠が入ってるから取ってくれませんか?」
「は?何、お前そういうプレイがご所望なのか?」
「いや、そうではなくて……。いやそういうことか? 今、あまり力の調整ができそうにないから、拘束しちまった方が楽だと思うんすよね。」
そう言いながら理一は両手を合わせて、一総の前に差し出す。
「お前がそちらの方が安心して集中できるって事なら仕方がない。パワー系の異能ってのも大変なんだな。」
「脱がせる過程も大切なんだがな。」とぼやきながら一総はブレザーやYシャツ理一の上半身に纏っている服を手早く脱がせる。
手錠は不思議な形状をしており、警察が使うような手首に着ける輪の間に鎖が付いているものではなく8の字になっている筒から鎖が伸びていてその先が金具になっていた。
一総は理一に手錠をはめ、そこから出ている鎖をベッドにくくりつけ金具で固定した。
手なれた様子に、理一が笑う。
「会長サマは、こういったプレイもお得意なようで。」
「まあ、一通りな。」
仰向けにベッドに横たわる理一の上に、一総が乗り上げる。
そのまま見つめあう二人だが、理一が見つめあう問う状況に耐えられなくなって顔を逸らそうとした瞬間、一総は理一の顎を掴んで唇を合わせた。
まるで、神聖な儀式のようにあわされた唇に理一は少し面食らう。
いや、ただ何となく、一総はそういう部分を軽く考えていそうな気がしていたのだ。
まあ、それまで含めてそう見せている可能性もあるが、こういった経験のほとんど無い理一にはどちらだか分らなかった。
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