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第7話
◆
ゼイゼイと二人の息の音だけが室内に響く。
ズルリと中に入っていた物を引き抜かれると理一はその刺激に「ぅあ。」と喘ぎ声を洩らす。
ただ、頭の中はすでに冷静になり始めているらしく、反射的に手で口を覆おうとして手枷がある事を思い出し、ッチと盛大に舌打ちをした。
事後のけだるい雰囲気をぶち壊すように、理一は口を開いた。
「とりあえず、この手枷外してもらっていいっすか?」
「ああ。」
と言いながら一総は体をおこし、手際良く手枷を外した。
一方の理一は手枷を外してもらった後、手首をさすって感覚を確かめていた。
「跡にならなくて良かったな。」
「まあ、異能、なんでね。」
理一が何て事のないように返した。
「異能って言ったって怪我もすれば病気もするのが一般的だろうが……。現にお前のいとこの木戸雷也もでかい傷跡あるだろ?」
何の気なしに一総が言った一言に、ビクリと理一は動きを止めた。
あまりにそれが目立ってしまい、一総にどうしたと聞かれるがあいまいに濁す。
理一はまるで話を変えるためのように、早口でしゃべり始めた。
「先輩の能力って、精神操作系かと思ってましたけど、肉体操作も込みなんすね。」
「は? 何言ってんだお前、花島の能力はそんなんじゃねーよ。それとも何か?自分がアンアン喘がされた理由を精神操作にしたいっつーことか?」
延髄反射のように、言い返した一総に、理一はくくくと笑い始め、終いには大笑いに変わっていた。
憮然という表情がぴったりな一総に理一は、なんとか笑う事をやめ言った。
「別に、気持ちよくしてもらった事に不満は無いっすよ。むしろ感謝してるくらいなんで。」
悪戯っこのように笑顔を浮かべる理一に他意があるようには見えない。
「先輩の能力には感謝しているんで、一つだけ言うんすけど、精神操作って言うのは花島の人に説明してもらった事があるんすよ。」
「……誰に聞いた。」
顔を近づけて妖艶に笑う一総に理一は、ああ、能力を使ってでも聞きださなければならないと判断したのかと思う。
「正確には俺自身が説明を受けた訳じゃなくて『間接的』に見聞きしただけっすよ。綺麗な女性だったとだけ言っておきます。」
「……過去形か?」
「そう、過去形っす。」
「蝶の入れ墨のか?」
何気なく言った自分の一言をしっかり覚えているのかと少しの驚きを感じながら理一は「どうだったでしょうか?」とはぐらかした。
「そんなことより、俺シャワー浴びたいんスけどいいっすか?」
「お前には余韻とかそういうものはないのか?」
「俺と会長ってそんな関係じゃないっすよ。」
「まあそうだが……。
まあいい、今日のところはこれで帰る。
できればまたお相手して欲しいがどうだ?」
妖艶に一総は笑った。
しかし理一はどこ吹く風で「まあ、機会があればお願いするっすよ。」と曖昧に返した。
◆
一総が部屋から出ていくと理一はため息をひとつついた。
何の動揺も無いように一総と話していたが、理一は驚きで一杯だった。
あれほど自分自身の中で渦巻いていた暴力的な衝動がきれいさっぱり消え去っている。
暴走気味だった力の制御も問題ないレベルまで戻っており、これなら通常の生活がおくれそうだ。
そもそも、花島の力の意味をある程度理解していた理一にとってここまでも効果はいい意味での誤算だった。
二人の相性がよかったのか、それとも一総の力が強いのかそれは理一には分からない。
だが、あのままであったら間違いなく純を拉致監禁からの凌辱していたに違いない。
本当に助かった。
鈍い痛みのある腰をさすりながら、得たものに比べればバックバージンの一つや二つ安い、と思ってしまう。
ただ、頭が冷静になってしまった所為で一つの疑問が浮かぶ。
一総にとってこの取引の利点は何だ?
普段から、理一を誘っていたのは花島の力が夜伽に特化した能力だと周りに知らしめるためだろう。
じゃあ、わざわざ実際にセックスをした上に、能力を使って理一の精神を落ち着けた理由は?
自動発動型の能力という事なのか?
理一は花島の能力に関して詳しいところまでは知らない。
そのため、答えは出ないのであるが、体を清めた後、深夜までベッドで寝ころびながら延々と一総の思惑について考えていた。
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