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第14話
◆
寮の消灯時間が過ぎた22時半過ぎ、一総の部屋のインターフォンがなった。
一総はこんな時間になんだと思ったが、直ぐに週末実家へ帰ったきりの理一の事に思いいたって足早に玄関へと向かった。
玄関のドアを開けるとそこには想像した通り理一が立っていた。
その顔は酷く血色が悪い。
「こんばんわ、センパイ。」
明らかにカラーコンタクトだと分かる瞳だけが爛々と輝いていた。
「おい、無理してくる事無いんだぞ。今日帰ってきたんだろ。明日でも俺は構わないし、今日は帰って休んだらどうだ?」
あまりの覇気の無さと顔色の悪さに一総が言った。
「ああ、別に病気とかじゃ無いっすよ。理由は分かってるので気にしないでください。
……それよりあげてもらっちゃ駄目っすか?」
それとも、すでに誰か来てるっすか?と理一が聞くと、一総はジッと理一を見つめた後、溜息をつくと入れと言って室内へ招きいれた。
室内は男の部屋とは思えないくらい整理整頓が行き届いており、理一は思わずキョロキョロと見まわした。
「とりあえずそこに座って待ってて。」
一総はダークブラウンのソファーを指さして言った。
直ぐにヤらないのかと拍子抜けしたものの理一はそれにしたがってソファーに腰を下ろした。
一総はキッチンへ向かい暫くすると手にマグカップを二つ持って戻ってきた。
マグカップからは湯気が立ち上り、ココアのいい香りが広がった。
「胃が悪い訳じゃないよな?」
手に持ったカップの片方を差し出しながら一総は言った。
「はい。ありがとうございます。」
カップを受け取ると理一は軽く息を吹きかけて冷ました後ゆっくりと口を付けた。
それをマジマジとみる一総の事を訝し気に理一は見つめ返した。
「何すか?媚薬でも混ぜたんすか?」
「いや、自分自身の体液が媚薬になるのにわざわざ市販品に頼る必要も無いだろ?」
「まあ、そうっすね。」
疲れきっている体にココアが浸みる。
「それ飲んだら一緒に風呂入るか?」
「それは……。」
「誘ってるんだけど、嫌か?」
そのつもりで来たのだ。理一に異存は無かった。
だが、別に風呂とかじゃなくていきなりで良いっすけど?」わざわざ風呂に入る理由が見つからなかった。
「バスルームでナニもしないとは言って無いんだけどな。」
苦笑交じりで一総は返した。
少し驚いた様な表情で理一は一総を見た。
そこには玄関でみた心配そうな表情も、普段のからかい交じりの先輩としての表情も無く。ただただ、妖艶に微笑む男の顔があった。
「それじゃあ行こうか?」
片手を理一に差し出すと、理一はそっとその手の上に自分のそれを重ねた。
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