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恋の香り
花島一総からはいつも香を焚いたような香りがする。
それは、性行為の最中特に強くなる気がする。
理一は覆いかぶさる一総にしがみつく様に首元に顔を寄せた。
中を目一杯広げられて余裕は一切ない。
一総の首筋はあせだろうか、しっとりと濡れているようだった。
誘われるように、理一はそこに唇を寄せた。
塩辛かったはずだ。にもかかわらずあまり味は感じなかった。
ぶわりと、香の匂いが強まった気がした。
その香りをかぐと頭の芯がしびれる。
「大丈夫か?飛んでないな。」
一総が理一の顔を覗き込んだ。
目の前がチカチカした気がしたがまだ意識はしっかりしているつもりだ。
「この匂い。」
何なんすか?そう続けようとしたが快楽で呂律が回らなかった。
はあ、と熱い吐息がもれる。
「ん?木戸、お前何か匂うのか。」
「は?お香みたいな香りさせてるっすよね。」
いい加減じれったくなってこの会話を早く終わらせたかった。
「あー。……フェロモンみたいなもんかな。」
器用に片腕で体を支えて、もう片方の二の腕の匂いを嗅ぐような仕草を一総がする。
「後でゆっくり風呂でも浸かろう。それでも匂い残るから。」
普通は匂い感じない筈なんだけど……。まるで独り言みたいに一総はぽつりと呟いた。
だって、こんなに強い匂いがするじゃないか、言い返そうと吐き出した言葉は喘ぎ声にしかならなかった。
返事を聞くつもりが無い、とばかりに一総が腰を穿つ。
そうされると、もう、理一は思考もままならない。
ただ、快楽に身をゆだねるだけだ。
一総が、理一の鎖骨に唇を寄せた。
そっと舐めてから、歯を立てられる。
ひっという短い嬌声がもれた。
香りは初めて声をかけられた時からうっすらとしていた。
今どき香水をつけるなんて珍しくもない。
だから、そこに疑問を抱いたことも自分だけに感じられる匂いだとも思いもしなかった。
それに、匂いが強くなったと感じたのはごく最近なのだ。
揺さぶられながら、ぼんやりと理一は一総を見上げた。
下腹部は重たいし、起立は先走りでぐちゃぐちゃに濡れているのが分かる。
体中がジンジンと熱を持って、ただその熱の解放だけを願っていた。
それに気が付いたのか、一総は浅く笑顔を浮かべてそれから唇を合わせた。
喘ぎすらすべて飲み込む様な濃厚な口付けに、理一は自分で下肢が震えたのが分かった。
まるで喜んでいるようで恥ずかしかった。
中にある一総の分身の体積が増えた気がした。
ラストスパートをかけるように動かれて、目の前が真っ白にスパークした。
意識を手放す直前、ああこの香りは花の香りなのかという事に気が付いた。
次に理一が目覚めた時には風呂につかっていて、当たり前の様に一総に抱きかかえられていて、後ろから花の匂いがしてああ、体臭なのは本当なのかと妙に冷静に納得してしまった。
石鹸の香りでもかき消されないその花の匂いは理一の体の内側からじくじくと浸食している気がした。
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