1 / 78

第1話《Ⅰ章》俺は姫①

「今日はありがとう。姫のお蔭で助かったよ」 「いえ。こちらこそ、ありがとうございます。あの……」 「ん?どうしたの?」 「えっと」 「思った事があるなら言ってみて」  カラコンをはめていないのに、奥に深い藍色を秘めている先輩の瞳。  綺麗だ。 「先輩ってハーフですか」 「えっ?」  ななっ、なにを!?  心の声がダダ漏れてしまった★  先輩がビックリしてるじゃないか。先輩を困らせてしまってどうするんだ、俺! 「俺は純日本人だ。ハーフじゃないよ」 「あの、そそそ、そうじゃなくって。それは分かってます」  ……って。 「分かってる事聞いたら失礼じゃないかァァッ!」 「落ち着いて。どーどー」  ううう、優しい先輩に背中さすられている。 「吸ってー、吐いてー、吸ってー。深呼吸だよ。すーはー」 「すーはー」 「すーはー」 「すーはー」 「すっすっはー」 「すっすっはー」 「へいへいほー」 「へいへいほー」 「ヒッヒッフー」 「ヒッヒッフー」  ………………あれ?  なんか違くない? 「ヒッヒッフー??」 「姫の子どもだったら、可愛いだろうね」  俺……  子ども……  産む…… 「キャアアアァァァァ〜!!」 「姫!頭から湯気が!」 「俺っ、子ども、うううっ、うっむ〜」 「アァ、また湯気が出た!」 「子ども〜、先輩の〜」 「しっかりするんだ、姫、姫!」  先輩の声が遠くで聞こえた。  視界が暗くなっていくのは、どうして?

ともだちにシェアしよう!