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第4話《Ⅰ章》俺は姫④
「今のは姫の行動を読み切れなかった俺が……悪い。痛たたた」
うぅ。思いっきり、ごっつんこした。
俺もかなり痛い。先輩はもっと痛いよ、きっと。
「俺の方こそ、ごめんなさい。先輩、怪我は?……って、痛いのはおでこですよね。先輩にも冷えピタシート!保健室に行ってきます」
「暫くしたらおさまる。たぶん」
「えっと……ごめんなさい」
心苦しさに語尾が小さくなってしまう。
「相手の動きを予測できないなんて、バレー部元キャプテンとしては失格だよ。現役を離れたのが大きいかな」
先輩は怪我で部活を引退した。
春高まで頑張る予定だったんだけど。でも春高出場を決めるまで、チームを引っ張ってたんだから凄い。
県予選の決勝。ゲームの流れを変えたスパイクには本当、鳥肌が立った。
「なに?溜め息なんかついて。もしかして、俺に惚れちゃった?」
「ななっ」
なんで、この人には考えてる事が分かるんだ。もしかして俺の頭の中、透け透け?
「姫の上げたトスでスパイク決めたかっなぁ」
「無理!」
ゲームを組み立てるセッターは、頭が良くないとできないんだ。俺じゃ、絶対無理!
それに俺はバレー未経験者。体育の授業でかじったレベルなんだ。特に運動が得意って事もない。運動神経は中の中。
全国強豪のバレー部なんて、絶対無理!
「やってみなくちゃ分からないよ。姫は素直だから飲み込みが早いと思う。時々部活の指導してるから。今度おいで。教えてあげる」
「ヒャア〜〜〜!!」
「えっ、なんで?なんで、そこで叫ぶの?もしかして俺、嫌われてる?」
フルフルフル
思いっきり、かぶりを振った。
(逆!)
エースに教えてほしい人は、いっぱいいるんだ。バレー初心者の俺なんかが教えてもらったら、嫉妬されちゃう。
「振られてしまった……」
ぐすん。
先輩が両手で顔を覆って悲しんでいる。
(どうしよう)
先輩を泣かせてしまった。
「先輩を振るわけないです!今日のデートも楽しかったです!」
「だよね♪」
えっ……
(先輩、泣いてたんじゃ??)
グイって顔が近づいて、鼻と鼻の先が触れそうなくらいの至近距離にいる先輩は、満面の笑みだ。
「俺もデート楽しかった。ありがとう、姫」
目の前に先輩の顔!!
(近い!!)
今、フゥ〜って。
(先輩の息がかかった)
「アヒャアぁぁぁぁー!!」
「えっ、なんで?どうして倒れるの?姫ェェー」
先輩の刺激が強すぎます★
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