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第5話《Ⅰ章》俺は姫⑤
「ひとまず落ち着こうか。どーどー」
「……はい」
恥ずかしい。
(先輩に迷惑かけてばかりだ)
同じ高校生なのに。
ぐすん。
「もしかして……」
どうしたのだろう。
やけに先輩が神妙な面持ちをしている。
「臭う?」
「えっ」
「ベッド臭いかな」
「あのあのっ」
ねぇ、どうしてそんな話になってるの。
ねぇ、教えて。先輩。
「なんで、急に」
話の方向が変だ。
「俺、部活の指導してるから。気は遣ってるつもりだけど、ベッド汗臭いかな」
「全然!全く全然!むしろ先輩の匂い、いい匂いです!」
……って。
なに言ってるの、俺〜ッッッ
これじゃ、先輩のベッドでクンクンする匂いフェチの変態だ★
……って。
(ここ……)
先輩のベッド!!
気が動転して、すっかり忘れてた。
俺、先輩のベッドに寝てるんだったー!!
「姫!!」
(違うんです、先輩っ)
先輩のベッドは決して汗臭くありません。
むしろ、ふわふわ良い香りです。
(でも)
でも、でも、でも。
思春期の健全な男子高校生には、刺激が強すぎます!
「姫ぇぇぇ〜」
先輩の声が遠くで聞こえる。
視界が暗くなっていく。
「姫ぇぇぇ〜」
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