5 / 78

第5話《Ⅰ章》俺は姫⑤

「ひとまず落ち着こうか。どーどー」 「……はい」  恥ずかしい。 (先輩に迷惑かけてばかりだ)  同じ高校生なのに。  ぐすん。 「もしかして……」  どうしたのだろう。  やけに先輩が神妙な面持ちをしている。 「臭う?」 「えっ」 「ベッド臭いかな」 「あのあのっ」  ねぇ、どうしてそんな話になってるの。  ねぇ、教えて。先輩。 「なんで、急に」  話の方向が変だ。 「俺、部活の指導してるから。気は遣ってるつもりだけど、ベッド汗臭いかな」 「全然!全く全然!むしろ先輩の匂い、いい匂いです!」  ……って。  なに言ってるの、俺〜ッッッ  これじゃ、先輩のベッドでクンクンする匂いフェチの変態だ★  ……って。 (ここ……)  先輩のベッド!!  気が動転して、すっかり忘れてた。  俺、先輩のベッドに寝てるんだったー!! 「姫!!」 (違うんです、先輩っ)  先輩のベッドは決して汗臭くありません。  むしろ、ふわふわ良い香りです。 (でも)  でも、でも、でも。  思春期の健全な男子高校生には、刺激が強すぎます! 「姫ぇぇぇ〜」  先輩の声が遠くで聞こえる。  視界が暗くなっていく。 「姫ぇぇぇ〜」

ともだちにシェアしよう!