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第15話

結局、その馬鹿とは一緒に飯を食べて、それから午後の授業に出た。 自分がキスをしたことについて、その間あまり考えなかった。 百目鬼も真っ赤になったままとはいえ、飯も食べていたし、部活へ向かう姿も見た。 ようやく、今までの茶番が告白の様な何かなのだと気が付いた。 けれど、それでなにになるのかは分からない。 それに、何故あんな無茶苦茶な台詞を選ぶのかも分からない。 百目鬼はゲイというやつなのだろうか。 冗談でキスができる様なやつには見えない。 態々あんな自分をおとす様な言葉を公衆の面前で言うこと自体、理解できない。 本当に俺の事が好きであるのなら、告白のセリフには絶対に選ばない言葉だった。 「意味わかんねーやつ。」 まるで何事も無かったかのように、放課後自分の元を訪れる人間はいなくなった。 変わったのは、しばらく道場に通えなくなったこと位だ。 それだって、あそこまできっぱりとしたものでなければ、子供の頃何度かあった。 だから、自分の中で何が引っかかってるのかが分からない。 多分、道場で体を動かせない事とそこで、イライラしているのだろう。 けれど自分が何に、ひっかかりを覚えているのかは分からない。 もう、わざわざ自分の元へ来なくなったということに苛立っているという訳ではない筈だ。 そもそも、昼休みに来ていたのだからそれは関係ない。 一発ぶん殴ればすっきりするのだろうか。 別に殴ってもいい様な状況なんじゃないかとさえ思えるが、実際避けずに殴られる百目鬼を見たら、勝ちを譲られた時の様に怒る自信があった。 ただ、別に百目鬼と友達になりたいとは思っていない様な気がする。 休日に一緒にゲームセンターに行きたいとは全く思わない。 それでも、もし明日朝、今日と同じ場所に百目鬼がいたら一緒に並んでランニングをするだろう。 それを俺は、望んでいるのかもしれない。 自分で自分がよく分からなかった。 百目鬼も同じなのだろうか。ふとそう思った。

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