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第23話

何のために気持ちを伝えるのか。 そんなことは今まで考えたことが無かった。 彼女がいたことは過去にある。 けれど、その時意味も無く告白をされたことは多分無かった。 付き合いたいとか、気持ちの整理をしたいとか、普通はなにか理由があって告白するものだろう。 ノリだったとしても、少なくともああはならない。 嘘だった以外、辻褄の取れない様な事をする理由が分からない。 本人に聞けば教えてくれるのだろうか。 でも、どうやって聞けばいい? 俺は百目鬼と付き合いたいとはあまり思っていない。 あの告白の真意は? と聞いて恋人として付き合いたかったと言われたら俺はどうするのだろう。 どうしたらいいのか分からない。 正直分からないのだ。 だから、そんな事は百目鬼に聞けない。 ぼんやりと百目鬼がおにぎりをかじるのを見ているしかない。 「一口いるか?」 あまりにもじいっと見てしまったからだろう。百目鬼が言う。 何となく。 ほんとうに何となくイラっとして、顔をおにぎりに近づけて一口かじる。 たらこのおにぎりは好きだ。 だからといって高校生にもなって一口だけ貰うなんて普通はしない。 百目鬼も本当に俺がひと口貰うとは思っていなかったのだろう。 今度は百目鬼が俺の顔とおにぎりを交互に見ている。 「これ家に持ち帰って舐めまわしたいな。」 「ハイハイハイ。あほか。」 だからなんで一々言い方が気持ち悪いのか。 仕方が無くもう一度おにぎりをかじる。 「たらこは全部貰ったから、とっとと食え。」 ここは教室で周りに他の人間もいる。 もうほとんど皆冗談の類だと思っているらしいけれど、居心地が悪い。 いたたまれなくなるのだ。 何故わざわざこのタイミングでこれを言うのか。 百目鬼の思考回路が分からない。 口の中に入っているたらこを咀嚼して、それから飲み込む。

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