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第22話

「親父、……師範からは何も聞いていないんですか?」 恐る恐る聞くと、カナタさんはふはっと笑った。 「実は大体聞いてる。」 多分妹が父に伝えて、父が彼方さんに伝えたのだろう。 何だか少し気はずかしい様な微妙な気分になる。 どこまでの話を父が聞いていて、その話をどこまでカナタさんが聞いているのかは知らない。 けれど、柔道部の人間と柔道で仕合って、それでというところまでは少なくとも聞いているのだろう。 「ちょっと先になるだろうけど、再戦するんです。」 息を大きく吐き出した後、そう伝える。 彼方さんは面白そうに笑うと「仕方がないなあ。」と言った。 「とりあえず投げ技から練習しようか。」 やるからには確実に勝てる様にしよう。 口角を上げると彼方さんは構えた。 ◆ 人というのは慣れればそういうものだと思ってしまうものだろうか。 百目鬼と二人で弁当を食べていても、もう誰も気にしていない。 俺自身誰かに百目鬼と二人で並んでいるところを見られても何も思わない。 百目鬼も特にそれに関して何か言ってくることは無い。 時々冗談のように抱きたいと言われるが周りはもう冗談のようにとらえているらしく普通だ。 俺だけがそれを冗談としてとらえられないのだ。 もしかしたら、百目鬼自身も本気で俺が受け止めると思っていないのかもしれない。 鍛錬で表情を作れるようになっていて良かったと思う。 アホくさい話だという表情を顔にへばりつかせて昼飯を食べる。 心はそわそわとしているのに気が付いていない訳ではないが、俺自身そういう関係になることを望んではいなかった。

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