「ずっと、ランニングはあのコースだろ。」 傷跡を撫でながら百目鬼が言う。 確かに、ずっと川沿いのあの道を通るコースで走ってはいる。 武道の鍛錬と一緒で繰り返すことで精度が上がるので基本的に欠かしたことはない。 だけど、そんな事世界中の誰にも言ってはいない。 家族だって、どの道を走っているのか詳しくは知らないかもしれない。 「朝、走っているのを見なくなって、それで気になって調べた。」 随分前のことだ。 おれは百目鬼があの場所にいたことも知らない。 そのときにはもう俺のこと好きだったのか？　なんて聞けやしない。 だけど、百目鬼は俺のそんな空気を察してか困ったように笑った。 それから、傷跡にそって舌を這わせる。 傷跡はもう痛くないし、むしろそこだけ感覚は鈍くなっている筈だ。 なのに、舐められるとぞくぞくする。 じわりと期待するように先走りがあふれるのが自分でも分かる。 はあ、はあというお互いの息遣いばかり大きく聞こえる。 これじゃあ、俺の方が傷跡で性的に興奮しているみたいだ。 「ずっと、この傷跡に触れてみたいと思ってた。」 熱のこもった声で言われる。 「別に触りたいときにさわりゃあいいだろ。」 答えると、噛みしめるようにそうだなと百目鬼が呟いた。 単なる事故の傷だし、別に隠してもいない。 妹は気にしているが、大したことはない。 だけど、一時期動きは鈍っていた。 今はどの位影響があるのかは考えないようにしている。 そのことを考えるとどうにかなってしまいそうだから。それを百目鬼に伝える勇気は無かった。 そんな傷を愛おしそうに撫でて舐める百目鬼をみて、心臓が高鳴ってる。 「こっちも、舐めていいか？」 百目鬼がボクサーパンツをずらす。 興奮しきった昂りを見られる。 自分からこすりつけておいて今更恥ずかしい。 百目鬼が先端を指の腹で撫でる。 「はぁっ……。」 思わず声を漏らしてしまう。じわじわと顔どころか体まで赤くなっている気がする。 百目鬼が何か言う前に、彼のジャージの中に手を突っ込んだ。 俺と同じ位固くなっているものは、認めたくないけれど多分俺よりも大きい。 人のちんこをさわったのは初めてだ。 自分が気持ちいいところを触ればいいのかと裏筋のあたりを擦ると百目鬼が息を詰める。 たまらないなと思う。 「百目鬼も脱げよ。」 先走りでぬるつく昂りを手でこすりながら言う。 「おまえ、ホント……。」 百目鬼のそれはもう何度目か分からないため息だった。 百目鬼にだけ見える色気のようなものがあればいいと思った。