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第50話

* * * 百目鬼との電話の後、家族で夕食をとっている際「明後日時間あるか?」と聞かれた。 夏休み中なので道場が無い時間は基本は暇だ。 特にこれから一週間は。 「別に暇だけど。」 俺が答えると、道場の仕事を手伝ってほしいと父が言う。 「この辺の高校の柔道部が合同合宿をしていて、そこで他流を指導の一環として見せたいって話でな。」 年が近い方がお互いいい刺激になるだろう、と父が言う。 うちの流派はどちらかというと合気道や空手に近い。 どの位役に立つのかは分からないが、それよりも今は気になることがある。 「それってうちの高校も参加していますか?」 父に向けてのしゃべり方から、師匠に向けての話し方に変えて聞く。 「友達に見られるのは嫌か?」 父に言われるが、そういう事ではない。 「絶対に行きたい。」 百目鬼に会える。 別に話す時間が取れなくてもいい。 一目会いたいなんて思う日が来るとは自分でも驚く。 「演舞ですか? それとも実践形式ですか?」 俺が聞くと父は「両方だ。」と答えた。 「もう一人、カナタ君にも来てもらう予定だから。」 父が言う。 「……それから、この前勝手に試合をしたお友達を、きちんと紹介しなさい。」 その言葉にギクリと固まる。 “お友達”ではないのできちんと紹介はできないかもしれない。 けれど百目鬼とはもう一度どうしても仕合がしたい。 そのためにはこの人の許可が必要だ。 「わかりました。」 嘘を見抜くのが上手い人だ。 武道家としてのものなのだろうか、よく人を見ていると思う。 本当のことを言うべきなのか。 明後日のギリギリまで悩まなければいけない事なのかもしれない。

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