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恋煩い

一目惚れだった 話しかけられた瞬間 その笑顔に目を奪われた 黒い瞳の中に俺の姿が映る 「いつも、一人で来てるね」 俺を見て、その黒い瞳が細められる 「・・うん」 別に、友達がいないわけでは無かった でも充より気を許せる友人はできなかった だったら一人でいる方が楽だと思った 「フフ・・でも一人で来てくれた方が准君とゆっくり話せてうれしいけどね」 そう言って笑う彼に俺の鼓動が速くなっていく ドキドキと脈打つ心臓の音が聞こえてしまわないか不安になるほどだ なんでだろう・・ 男なのに・・ なんで、こんな気持ちになるんだろう 彼を見ると胸が苦しくなるんだ 会いたい 会いたい 会いたい 勉強とバイトの両立は辛かったけど、藤堂さんに会うと疲れも嫌な事も全部忘れられるんだ でも・・ 同時に胸の奥が締め付けられて・・苦しくなる これは恋だと自覚するのに時間はかからなかった 俺は彼の事が好きなんだ こんな気持ちになるなんて・・思いもよらなかった ・ でも、この気持ちは叶う事が無いのは知っている 店に行くと藤堂さんの周りには綺麗な女性が沢山いる 俺なのような男に好かれても迷惑なだけだ それでも彼に会いたくて店に行くのは止められない 会えば辛くなるのに 彼と話せば・・泣きたくなる 日に日に膨らむ気持ち 「・・好きなら、伝えてみれば?」 俺の気持ちを知った充は、言った でも、言えるわけない 言えるわけないじゃん 「分からないよ?藤堂さんだって・・准の事・・」 「なに・・夢みたいな事言ってるんだよ」 充の言葉に俺は失笑した 彼が俺の気持ちを知ったら・・ きっと、もう俺には話しかけてくれないよ 「失いたくないんだ」 大好きだから、ずっと側に居たい もう、大事な人は失いたくない 両親を失ったときのような思いは、もうしたくない 大切な人を失いたくないと言う気持ちは人より大きいのかもしれない 好きだから側に居たいんだ 「准・・そんなの、辛いだけじゃん」 「辛くない・・俺は藤堂さんの側に居たい」 俺が女性なら・・将来の望みが合ったかもしれない 「はあ・・」 充が呆れた顔をして俺を見ていた 俺は・・ズルい・・ 『初めまして・・藤堂紗希です』 彼に似た瞳 優しく微笑む彼女に俺は・・彼を重ねてる 「初めまして」 俺は・・ズルくて・・ 卑怯だ 「准・・何考えてるんだよ」 充の呆れた声 ゴメン でも 俺は・・彼を失いたくなかったんだ ずっと・・ずっと彼の側に居たかったんだ 例え・・それが自分を苦しめることになっても・・ ・ 「准君・・起きた?」 「んっ今・・何時?」 「8時過ぎる頃だよ」 「え?!そんな時間なの」 もう、尊が出かける時間だ 慌てて起き上がろうとしたが 「大丈夫、寝てなって」 俺の肩を押さえつけた。 「退院してからの疲れが出てるんだよ。無理はしないで」 「ごめん」 「謝らないで・・准君は、何も悪くないんだから」 そう言って、今にも泣きそうな顔をした。 その表情は、どこかで見たことがあったが、思い出せなかった

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