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6.愛される日は卵と豚の甘辛煮。【後:☆】
肉を入れ下味をつけていた鍋をコンロへと置く。
ガス式のコンロはカチカチと数度音を立て、綺麗な青色の炎がゆっくりとなべ底を這った。
コトコトと鍋の中身が揺れる音が静かなキッチンに響く。
醤油とカラメルの甘く香ばしい匂いが緩やかに立ち込める。
僕は丁寧に灰汁を取りながら、まだあの日の回想にぼんやりと思考を浸らせた。
***
愛の告白をされ、寝食を共にする。
スキンシップはすごく多かったし、時折キスをねだられて挨拶のキスではない、唇に触れるキスを何回かした。
無理矢理に体をつなげようとしたり、恋人へ昇格させようと迫ってくることはなく、その適度な距離が心地よかった。
壮太さんの提案通り、僕は大学に行く傍ら喫茶店アーサーでのバイトを続け、時折壮太さんの探偵業の雑務を手伝い、家事をした。大変な日もあったけど、テスト期間などは逆に壮太さんがサポートしてくれたのでかなり快適な生活を送っていた。
それが当たり前に自分の一部になったころ、唐突に物足りなさを感じた。
触れるだけのキス。繋ぐだけの手。一瞬のハグ。
まるで子どものような触れ合いは、僕の心と体をじっくりと煮詰め、気が付けば壮太さんともっとちゃんと触れ合ってみたいと思うようになっていた。
壮太さんに与えられたスキンシップの心地よさと、率直な愛情とそれから猶予が僕の臆病な心に到頭決心をさせた。
「……今度は、僕からきちんとしよう」
そう決意をし、生まれて初めての世界を検索した。
正直、初めてエロ本を見るより緊張したし正直あまりにグロく、ノンケだった自分には随分とハードルが高い検索一覧に何度か心が折れそうになった。それでも、それでも頑張って男性同士のあれこれの知識を叩き込んだのは、今まで自分の欲求を抑え、紳士にふるまってくれていた壮太さんへのせめてもの感謝と誠意だった。
「動けなくなる可能性が高いから、ごはん先に作って置こう」
男性同時のあれこれは、ボトム側――つまるところ、抱かれる側の負担がかなりあるらしい。
それもそうだ。そもそも使うところは入れるとこではなく、出すところなのだから。
色々考えるとめげそうになるから、一度頭を夕飯の用意でリセットした。
カラメルの甘く香ばしい匂いに、どこか東南アジアの香りがする豚の甘辛煮。
灰汁を取るまではついているけど、あとはじっくり余熱で火をいれるだけでいい。
そんな料理を作り置いて、僕はトイレに引きこもる。これから使う場所をまずは丁寧に綺麗にしなくちゃいけないから。
正直、かなり大変で。やっぱり無理かもしれないと頭の中に何度も浮かんだけど、その度に壮太さんの優しい笑顔が浮かんでしまって、結局ネットで見た通りにすっかりと腹の中を空っぽにすると、今度は風呂場に移動した。
この日のために、買っておいたローションと一緒にひんやりとした浴室にはいると少しだけ冷静になってしまう。
取り敢えず、自分の尻の穴を指で触ってみたが、こんな小さなところに本当にものが入るのだろうかと思うと恐ろしい。
でも、気持ちと同時に事におよぶことになった時に少しでもスムーズに行くように。
ローションを手に取ってゆっくりと掌で温めてから、緊張で硬い自分の窄まりをマッサージするように温めたローションでなぞっていく。
ふぅ、ふぅと息を吐いて、縁や入口を少しずつ、少しずつなぞっては、指先をつぷと差し入れてみて引き抜き、徐々に差し込む深さを増していく。ゆっくり、ゆっくり異物感に眉に力が入る。
気持ち良さを感じるどころか指が締め付けられて痛い。
「っ、ふっ、ぅ。そ、うたさん」
これから抱いてもらおうと思っている相手の名前を呼んでみると、少し体から力が抜けた。頭の中で、彼に抱かれることをイメージしながら指をゆっくりと根本まで埋めて、戻し、ローションを腸内に馴染ませる。
だんだんと慣れて来て、ぬちぬちと緩やかに動かせるようになった。
浴槽を背もたれに足あを開いて触っていたが、どうにも触らずらく、浴室のタイルに膝を着いて、胸側から脚の間に手を伸ばし、差し込み直す。さっき一度挿入したからか、すんなりと受け入れた。
これならもう一本いけるかもしれないともう一度ローションを纏わせて、一本目、二本目と入れていく。
また異物感にしばらく眉を顰め、くぐもった息を吐きながら、ぬっちぬっちと指を動かしていけば、不意に腰にビリッという痺れを感じた。
「ぅ、あっ!!!」
其処に触れた瞬間、声が漏れた。ビリビリと鈍く痺れている。それは嫌なものではなく、どちらかと言えば酷く気持ちが良かった。
「ここ、かな」
知識で得た、前立腺――という言葉が脳内に浮かぶ。ここを触れば。もう少し、どうにかなるかもしれない。
僕は恐る恐る、自分の未知の部分に指を這わせる。
指の腹に纏ったローションのぬめりを利用して、ゆっくりとなぞる。じんわりと何と無く下腹部が重くなる。
慎重に指を滑らせていたら、自然と息が上がり、気が付けば小さく喘いでいた。
視線を、脚の間に移せば萎えていた筈の愚息が立ち上がり、とろとろと蜜を溢している。
そしてその先、風呂場の鏡に自分の尻の穴を弄る指先が移り込んでいて、羞恥と興奮が爆ぜた。
ぬちぬっちと抜き差しを速めれば、さっきよりも声が上がる。
「ぁ、ぁああっ、すご、ぃ。ここ、やばっ、ぁっ」
指二本じゃ物足りなくなりもう一本突き入れる。自分の指より壮太さんの方が太いから、本番はもっと大変かもしれない。たくさん柔らかくしなくちゃ。
気持ちいいのと、壮太さんに喜んでほしいのとで、夢中で指を突き動かす。
前立腺を擦りあげる度に、ぴゅく、ぴゅくと先走りが漏れ出た。
「ひ、ぁ、ぁ、んんっ、そ、た、さん」
「なぁに」
「!?」
妄想に耽り、すっかりと慣らし好意が自慰に変わった。壮太さんの名前を呼ぶとやっぱり気持ち良くて、喘ぎ声を溢すように名前を呼んでしまえば、唐突に返事が返ってきて、僕は現実に引き戻される。
股間に向けていた視線を恐る恐る全貌に向ければ、しゃがみ込んで僕を見つめて居る壮太さんが居た。
「ぁ、ぅぁ、ぇ」
「……随分、可愛い事してるね」
「ぁ、ぁの、っ、ご、ごめん、なさい」
「色々聞きたいことがあるんだけど、取り敢えず出ようか」
ニッコリ笑っているのに、声色がいつもと違う。少し低く、厳しさを含んだような固い声に昂っていた体が急速に冷えていく。指を引き抜き、のろのろと体を起こせば、壮太さんは濡れることも気にせずに素肌のままの僕を軽々と抱きかかえた。
慌てて下ろして欲しいと伝えようとしたが、有無を言わさない瞳に黙殺され、僕は仕方なく彼に裸のまま抱きかかえられ、彼のベッドルームへと連れていかれた。
普段の紳士な様子とは違う乱雑さでベッドに投げ落とされ、怖くて膝を抱える。
明らかに怒っている様子の彼に、どうしたらいいのか分からなかった。
「それで……何、していたのかな。和戸くん」
「……っ、ぁ、の、それ、は」
「巽、きちんと話して」
子どもをしかりつけるような口調で、初めて下の名前を呼ばれ肩が跳ねる。
壮太さんの微笑んでいるのに微笑んでいない顔が怖い。泣き出してしまいそうなのを必死に堪え、僕は自分の醜態を言葉に変えた。
「……きょ、う。壮太さんに、お返事をしようと、思って」
「――ぇ?」
「ずっと、待っててもらったから、あの、流れで、せ、セックスしても大丈夫なように、用意を」
最初は本当に用意のつもりだった。前立腺に触れ、壮太さんとの営みを妄想したらいつのまにかそれはただの自慰行為になっていた。こんな形で、返事を伝えるつもりはなかったけど、貴方との触れ合いをもっと深くしたいと思った。
「壮太さんと、ちゃんと、パートナーになりたい、です。ぁの、こんな、はしたない奴はだめ、ですか?」
言い切って悲しくなってきた。あれだけ男同士は――と答えを先延ばしにしていたのにアナニーに耽っていたなんて幻滅されても仕方がない。こんなことで終わりになってしまうのかと思うと怖くて、壮太さんの顔がまともに見れなかった。
暫くの沈黙が部屋に満ちる。痛いくらいの、静かな時間だった。
それが破られたのは壮太さんの溜息のような呻きだった。
「あー……、もぉー」
おそるおそる、視線を向ければベッドに腰を下ろしながら目元を抑え、天を仰いでいる壮太さんが居た。
僕は声をかけていいものか悩んで、ただ静かにしていた。やがて、ゆっくりと壮太さんが目元を抑えていた手を退け、顔を此方に向けた。その顔は、いつもの柔らかな笑顔と、潤んだ瞳だった。
「巽、僕の生涯のパートナーになってくれるの?」
「ぁ、えと……そ、壮太さんが、良ければ」
「いいに決まってる。この日をずっと待ってた」
ゆっくりと縮こまっていた体がベッドへと押し倒される。僕の上に影が差し、ゆっくりと唇が額に触れる。
それから頬、唇へと壮太さんの優しく、甘い唇が何度も、何度も啄んできた。
「このまま、していいんだよね?」
壮太さんの大きな手が頬をなぞり、剥き出しの素肌を滑り、それから脚の間へと進んでいく。
今更ながら、自分が素肌を晒していることが恥ずかしくなるが、もとよりそのつもりであんなことをしていたのだ、僕はコクリと小さく頷いた。
***
「んんっぁ、、ぁっ!そ、たさん、ゃ、も、しつこっぃ」
「んー……いやぁ、豚の甘辛煮みたらあの時の巽のこと思い出して、意地悪したい気分になっちゃったからなぁ」
「っ、も、いつまで、それ引きずるの?」
「最高の日でもあり、悔しくもあった日だからあと数年は引き摺るかもしれない」
「……壮太さん、ほんと重い」
彼の拗ねた子どものような顔を見ながら僕は呆れたように顔を背ける。
仕事を終えた彼にベッドルームに引っ張られ、あの日の思い出を語られながらもう随分と執拗に指だけで高められている。
たっぷりとローションを挿しこまれた胎は、物足りない刺激にずっと痙攣しっぱなしだ。
甘イキでは足りず、かといって絶頂もさせて貰えない。
前を弄らせてくれるかといえば、やんわりと制止され、ただ只管にぬちぬちとぬるい刺激で腸壁を撫でまわされている。
「君の初めてはすべて僕が欲しかったんだから、しかたがないでしょう。お尻を初めて弄られて、驚いちゃう君とか見たかったのに」
最初で最後の男になるのだから、一から百まで全部自分が教え込みたかったと悔やむ顔は初めて抱かれた日のピロートークでも永遠と嘆かれたが、あれからもう何度も抱かれているのに今だに引きずっているとは思わなかった。
態と前立腺を外して意地悪い愛撫をする壮太さんに、もう焦れて、焦れて僕は我慢が出来ず彼の雄々しい首筋に腕を回して引き寄せた。
「奥っ……おく、していいから、も、いれてくださ、ぃ」
それは自分にとってあまりに負担のある誘いだった。
初めて、彼にそこを暴かれた時あまりの衝撃と暴力的な快感に身も蓋もなく泣いて善がった。
元々、長大な壮太さんのものはいつも奥の入口を容易く突く。
いつもは散々と突かれ、緩んだ隙に気が付けば捻じ込まれてしまっているので、自分から強請るなんてことは滅多にない。
「結腸していいんだ?ハマったらやだって言っていつもはイヤイヤするのに」
「い、です。も、焦らされる方がいやだ」
ぐず、ぐずと泣けてきてしまう。壮太さんの指がふやけてしまうほど、焦らされているのだ。
受け入れることに慣れた体だ、今更な話だ。
初めての日、男同士のセックスを調べてもちろん結腸という部分がどういう風に営みに影響を与えるか調べた。
女性のポルチオに似たような快感を得られ、ハマると男の快感よりソッチの方が良くなってしまうという。
事実、ハマりたくないといいながらもなんだかんだと壮太さんの性欲を受け入れている間に、すっかりと体の方は
ハマっていて、認めたくないだけだった。
甘えるように頬擦りをして、意地悪い気分になっている恋人をその気にさせるため精一杯媚をうる。
「はや、く。壮太さんの、おっきいので、奥子宮、虐めてほしくて、も、我慢、やだ、やですっ、そ、たさん」
「んん゛っ!!!!もー!もーー!!!!巽は、ほんっとにもー!!!」
僕を煽るのが上手すぎる。
唸る様にそう呟いたと同時に、指がずるりと引き抜かれ、血管が浮き腹までそそり立った壮太さんの竿がぼろりと
下着から取り出され、性急に宛がわれたと思うと閉じきっていない尻穴を一気に押し広げた。
「ああぁあっ――っ!!!――ッ!!!!」
待ち望んだそれに、息が詰まる。目の前がチカチカと閃光し、気持ち良くて漏れるように精液が腹の上に噴きこぼれた。カクカクと腰が小刻みに震えてしまう。
「はっ、相変わらず、凄いしめつけだけど、前より開くの早くなったね。慣れたのか……それとも、早く突いてほしくて我慢できなかったからかな」
「あ゛っ、ぁっ、ま、っでっ!!まだ、うご、ぃちゃっ、あ、ああっ!」
のっしりと体重を掛けられて、上から突き刺すようなピストンに喉を潰すように喘いでしまう。
焦らされていた分、雄子宮を貫かれた絶頂感はすさまじく、ヒクヒクと媚肉が小刻みに痙攣し続けた。
壮太さんの背中に爪を立てるようにしがみ付けば、彼の太い腕が背中に回り、まるで抱きしめるようにぎゅっと体が密着する。触れられていないのに痛いほどに立ちあがっている乳首が壮太さんの胸筋に擦られて、気持ちがイイ。
「今日は、ごはん用意済みだから、立てなくなってもいいよね」
「あ゛っ、あっひっぃっ!!!イッちゃ、ぅ、イクっ、イクからっ!!」
「いいよ、我慢して多分、たくさんイッていいよ。ピストンはやめてあげれないけど」
はっ、はっと短い息を吐きながら、壮太さんが腰を早めていく。その度に彼の嵩の張った亀頭が、ぐっぽん、ぐっぽんと結腸弁を開閉させる。その刺激にもう何度も中イキを繰り返した。
「ひ、ぁあっ、も゛イったぁ!イッってるぅっ、あ、あっ、ぁッ!!」
「ん、いっぱい、ぎゅーぎゅーしてくれて凄くきもちい」
「はひっ、ぃっ、も、奥、ぐぽぐぽっ、らめっ」
「奥していいって言ったのは巽だから、今日はずっと奥だよ」
「やぁあっ!ごめ、なさ、ぃっ、だめ、ずっと、ずっとはだめぇっ」
じたばたと腕の中から逃げようと藻搔く。気持ちが良過ぎて、怖くなったから、必死に壮太さんの種付けピストンから逃れようと腰を捩る。
のっしりと筋肉質な彼の身体が圧し掛かっているせいで、ビクともしないがそれでも本能的なものだった。
「だめが、だーめ。自分で言ったんだから責任もって、僕のペニス、たくさんトロトロの雄子宮でディープキスしてね」
「う゛ぁ!あ、っ、あぅぅっ、もれ、ちゃ、ぅ、精子もれ、るぅっ」
引き抜かれる度に雁がゴリゴリと前立腺と精巣を押し上げていくせいで、最早射精というよりはところてんのようにドロドロと精子がの尿道から押し出されていく。
射精ともよべないだらしない吐精は、ぐつぐつと下腹部にただ熱を蓄える。
その度に、すっかりと雄膣になってしまった胎内が与えられる悦楽を全て受け入れようと脈動した。
「巽のお漏らしで、僕のお腹べしゃべしゃだ」
「ぁ、あぅっ、ごめ、なさ、っ、お゛っ、ァっ―――!!!」
「お漏らしするような子はお尻いっぱい叩いておこうね」
「ひっ!や、ごめ、な、さっ、あ゛ぁぁっ、イっでるから、イッでるから!ピストンらめ、らめっ」
パンパンッとさながら本当に尻を叩かれているような音が鳴る程に、強いピストンに呂律が回らない。
ダラダラと涎を顎先に滴らせ、いつもより高い声で喘いでしまう。
背に回っていた壮太さんの大きな手が僕の両手を絡め取り、ベッドへと縫い付ける。
密着していた体が離れ、あの日押し倒されたように僕の上に影が降った。
「可愛いな、巽。とろとろで、あんなに昼間はカッコイイのに、僕の前で雌みたいな顔して」
「や、ぁああ、みな、ぃで、言わないでってばぁっ」
恥ずかしいのに顔が隠せない。じっと見つめられて、まるで視線にも犯されているような心地にされる。
肌が敏感になって、ちょっとの刺激ですら辛いほど感じ入ってしまう。
「白い肌に、真っ赤な乳首がピクピクしちゃってる。今日まだ触ってあげてないもんね」
「ぁ、ぁっ、ま、まってぇ、いま、乳首、やだぁ」
こんな状態で乳首まで責められたと思うだけで、勝手に胎がきゅんきゅんと窄まってしまう。
期待と良過ぎるこわさとで頭の中がぐちゃぐちゃだ。
触って欲しいような、でも今は嫌なような、ちぐはぐな僕の気持ちを分かっているかのように、唇を啄んだ壮太さんが、にっこりと悪い顔をして笑った。
「乳首は乳首で、たっぷり、時間かけてあげる。土鍋でゆーっくり余熱で火入れされちゃう、料理みたいにね」
まな板の上の食材をみるには、随分とぎらついた眼差しで。
僕は壮太さんの熱に、あっという間にとろとろと煮込まれていく。
首筋に這う、唇と舌のぬめりに沸いた頭が到頭と理性をとろかし、じっくりことこと、壮太さんの望むままに食材 はやらしく、おいしく、たべられ……
そうして僕の作った、味がしっかりと沁みた卵とトロトロの豚の甘辛煮は結局夕飯じゃなくて、夜食になった。
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