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あなたにラブレター ⑵
亡くなる数年前からガンを患っており闘病していたのだが、ガンは祖母の身体をじわりじわりと蝕んでいっていた。
病気が発覚した当時、祖父は既に他界してしまっており、祖母は一人暮らし。 通院や家事などは母が手伝っていた。入院生活になり祖母の体の自由が効かなくなってからも、身の回りの事は母がこなしていた。そこに、男息子が容易に介入できるものではない。自分が娘だったらよかったのにと幾度となく思った。
母の献身的な看病も虚しく、祖母はとうとう帰らぬ人となってしまった。
母は毅然と振舞ってはいるが、実際は耐え難いものがあるのだろう。こっそり父の前で泣いているのを見てしまったことがあると、陽人から聞いている。
祖母が亡くなってからは、より母を気にかけるようになった。実家には陽人がいてくれているので安心なのだが、なるべく帰って顔を見せてやりたかった。両親とも失うことになり、母はなんとなく心細いのだと思う。
それにしても、チーズケーキが食べたいだなんて。帰ってきてとは言わないところが実に母らしい。
牛乳をグラスの半分ほどまで入れ、製氷機から氷を数粒取り出し、グラスに入れておく。あとは出来たてのコーヒーを注いでカフェオレの完成だ。
「休みが決まったらまた連絡する。母さんにも言っておいて」
《はいよ。そんじゃ、またな兄貴。あんまりカフェオレばっか飲んでんなよ》
余計なお世話だと言ってやりたかったのだが、その前にそそくさと電話を切られてしまった。
毎晩酒を飲むよりマシだろ。俺は迷いなく淹れたてのコーヒーをグラスに注いだ。
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