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あなたにラブレター ⑴
《兄貴、次はいつ帰ってくんの?》
電話の話し相手は、5つ下の弟、陽人(はると)だ。一浪を経て、現在大学4年生。無事就活を終え、今は卒論に四苦八苦しているらしい。
陽人との兄弟仲は良好。定期的に電話やLINEのやり取りをしては、そういった近況報告をし合っていた。
コポポ、と目の前のコーヒーメーカーが音を立てる。サーバーの底に深い焦げ茶色が溜まっていく様子をながめながら、俺は答えた。
「特に決めてないな」
《母さん、またあのチーズケーキが食べたいんだってさ。ここんとこそればっか》
母の冬子(とうこ)は、大のスイーツ好きだ。先日お盆帰省の際に手土産としてチーズケーキを買って帰ったのだが、そのことを言っているのだ。危うく落っこちそうにでもなったのか、頬に手を宛てがいながら、何度も美味しい美味しいと言っていた母の姿を思い返した。
あれはチーズケーキの専門店で購入したもので、ワンホール3000円はする。以前職場で話題になり、俺自身気になっていた店だった。あの濃厚でまろやかなチーズの風味が蘇る。そう、丁度今淹れているコーヒーと一緒に食べるのにはぴったりだ。
蛙の子は蛙。俺も母同様、甘いものには目がない。
「母さんに言っておいてくれよ。お取り寄せもできるって」
《知ってる。俺も調べた。わかるだろ、兄貴をこっちに来させるための母さんなりの口実なんだよ。間違っても配送なんかするなよ》
昨年の冬のことだ。母方の祖母、つまり冬子にとっての実母が亡くなった。
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