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第2話 そうだ 京都、いこう。

「で、お前、仕事ハネたん?今日の夜まで撮影って言ってたよな?」 「んー」 「んーじゃねえって。明日はオフでいいんだよな?」 「ああ。明後日までオフ。押しまくりでオレの出番、月曜からになった」  出すもの出しまくったら、あとはシャワーと洗濯。  すっかり日暮れも早くなって外は暗くなっているけど、洗濯は部屋干しだから気にするのは洗濯機をまわす時間帯だけ。  今なら無問題。  すっきりさっぱりした志信に水のペットボトルを持たせて、俺は用事を片付ける。  志信はベッドの横にだらっと座って、テレビを見ている。  なるほど、今日の急襲は撮影押しまくった挙句の予定変更によるものだったか。  簡易物干しを組み立てて洗濯を干していたら、志信が俺を見て言った。 「そうだ。京都、行こう」 「は?」  どうした、いきなり。  なんかそんなテレビ番組でもやってたのか?  志信が見ているはずのテレビは普通にニュース番組で、京都のきの字も見当たらない。 「だから、京都に、行こう」 「今から?」 「おう」  首をかしげる俺を置き去りに、志信は自分の鞄を確かめる。 「財布と充電器と台本はある。よし行くぞ」 「えええ?」 「あ、お前は残る? じゃ、ちょっと行ってくる」  いや、待て待て待て。  ちょっと行ってくるって、京都だろ?  そこのスーパー行ってくるノリで行く距離じゃないだろ? 「い…や、オフはオフだから、お前が行くなら行くけど……今から?」 「今からならまだ余裕で、最終の新幹線に間に合うから」  外は暗いけど、多分世間の皆さまは夕飯時。  確かに新幹線はまだ走っているだろう。  でも、今から、京都?  まじか。 「ほら、行くなら急げ」という志信に急かされて、洗濯を干し切り、外出の用意をする。  スマホと財布と充電器。  仕事は一つ終わったところで、次の仕事との隙間だから資料という資料はないけど、念のためにカメラは持っていこうか。  そんな散歩に行くくらいの装備で家を出た。  慌ただしく出発した割には、のんびりした足取りで駅に向かい、電車を乗り継いで東京駅。  そして自由席でもゆったりした席の空き具合の新幹線に乗った。  うん、昨今の交通事情は素晴らしい。  そして改めて思うのは、時間を金に換算できる大人の財布が持てるようになって良かった、ってこと。 「つか、まじで今日、着いてるし」 「だから、そう言っただろ」  日付が変わるまでに、あと三十分ほど。  そんな時間に、志信と俺は、京都タワーを見上げていた。

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