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第15話 俺は弟に恋をしません
夕飯を済ませ、俺は部屋のベッドに横になっていた。
なんか、今日一日で色々あったな。これ、一日の出来事なんだよな。
前世を思い出して、弟が前世での幼馴染で魔王だってことを知って、その弟に迫られて、貞操の危機にあった。
一日で消化していいイベントじゃないぞこれ。
一気にイベント詰め込んだらあとで困るじゃん。やることなくなっちゃうよ。絵日記も何もない一日でしたで埋まっちゃうよ。
「はぁ……」
一日でどっと疲れた。明日からどうなっちゃうんだろうな。
俺とアルトでエイリに対する認識が違いすぎるんだよ。性格が上書きされたとはいえ、アルトの意識が完全に消えたわけでもない。俺にはちゃんとアルトの記憶がある。上書きっていうより、俺の性格が優先されてるとでも言えばいいのかな。
アルトは俺の下の兄弟が欲しかったって願いが叶ったことでメチャクチャ溺愛してしまった。俺も相手が幼馴染だって気付かなかったら甘やかしてたかもしれない。
だってエイリは普通に可愛いし。優秀で自慢の弟なわけだし。まぁかといってアイツみたいに性的な目で見れるかっていったら別だよな。
いや。アルトの記憶を思い出しても、結構ギリギリだったな。エイリがそうなるように可愛くて出来の良い弟を演じていたのかもしれない。恐るべし魔王。
エイリが近付くと、そういうアルトの意識に引っ張られそうになる時があるんだよな。俺自身もエイリのことは嫌いじゃないし、大事な幼馴染だから無下に出来ないところもあるし。
「参ったな……」
俺、こういう気持ちがないのは確かだけど昔からアイツにはちょっと弱いんだよ。幼い頃を知ってるせいもあるんだろうけど。
でも、だからこそ、こういう気持ちでエイリの想いに応えることは出来ない。
これで応えるのは、ただの同情じゃないか。アイツはアルトじゃなくて俺のことが好きだと言ってるわけだし、俺自身の気持ちでちゃんと応えてやらないといけない。
俺は魔王には屈しない。幼馴染に落ちない。弟は恋愛対象にならない。
よし。しっかり肝に銘じろ、俺。
はい、復唱。弟に恋しません。弟に恋しません。弟に手を出しません。
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