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第19話
ティティの舌は絶妙な動きでトゥヒムの熱を翻弄する。形をなぞっていたかと思えば裏筋をくすぐり、そうかと思うと鈴口をえぐるように強く刺激した。緩急のあるその動きに、トゥヒムの唇からは熱く切ない息があふれる。
長いまつげは快感に震え、バラの花弁に似た唇が淫靡な熱に濡れる。それを見つめるリュドラーもまた、熟れすぎた胸の尖りを従僕にもてあそばれて、精悍な顔を淫らにゆがめた。
「ぁ、あ……、んっ、ぅう」
小刻みに震えるトゥヒムは、猛禽類に狙われ怯えるあわれな子リスのように、ティティの愛撫にさらされていた。可憐な容姿とは相容れぬ肉感的な部分が、雄々しく脈打ち先走りをあふれさせている。ティティの唇はそれを含み、さもおいしそうに味わっていた。
清楚な花に似たトゥヒムと艶麗なティティの媚態が、リュドラーの意識を支配する。おなじ男とは思えぬ中性的な美を備えたふたりの妖しい行為は、奇妙な昂りをリュドラーに与えた。加えて乳首に走る刺激が、リュドラーの肺腑から情欲の息を絞り出す。
「は、ぁあ、あ……、っ」
リュドラーの嬌声がトゥヒムの耳を打ち、彼の意識を揺さぶった。ぐらぐらと揺れる脳が、欲に身じろぐリュドラーの姿を薄暗い喜びに変換する。トゥヒムは腰を熱くして、無意識に脚を大きく開いた。
とまどっていたトゥヒムの体が性欲に従ったと知り、ティティは喉奥まで陰茎を飲み込んだ。ゆっくりと頭を上下し、ねっとりと舌と上あごでトゥヒムの欲を刺激する。
「ふっ、は、ぁあ……、あ、あん」
唇から舌を覗かせあえぐトゥヒムに呼応して、リュドラーも舌を伸ばして劣情に鼻を鳴らした。
「ぅ、んぅ……、はぁ、あっ、あ、あ」
緩慢な愛撫に理性を侵食されていく主従の姿を、サヒサは静かに見守った。ティティはリュドラーに舌技を見せつけ、リュドラーは興奮するトゥヒムの姿を意識に焼きつける。
己の唇でトゥヒムをあのようにしたいと、ふつふつと欲望をたぎらせるリュドラーの乳首は、これ以上ないほどに熟れきって従僕の指にかわいがられていた。
「ふぁ、あっ、は、ぁあう、んっ、は、ぁあ……っ、う」
尖りきったリュドラーの乳首に絡む従僕の指が、自分の指であればとトゥヒムは思う。しっとりと汗ばむリュドラーの肌を隠すシースルーの赤いノースリーブ。留め具代わりのリボンをほどき、厚い胸肌に指を這わせたい。従僕の指がたわむれている尖りをつまみ、ころがし、ひっぱり、押しつぶして、リュドラーの喉から腰の奥をざわめかせる啼き声を引き出したい。羞恥に染まる目元から快楽の涙をあふれさせ、見え隠れする舌の上に己の欲を突き入れて、リュドラーのなにもかもを従わせたい。
自分をしゃぶる唇が、リュドラーのものであればいいのにと願った瞬間、トゥヒムは強く吸い上げられて精を漏らした。
「あっ、ぁはぁああ――っ」
のけぞったトゥヒムの姿に、リュドラーの陰茎は激しく震えて先走りを多量にこぼした。それを目の端に捉えながら、ティティはトゥヒムの残滓を吸い上げる。
ティティは艶然とほほえみ、腕を伸ばしてトゥヒムの頬に触れると、絶頂の余韻に浸る視線を自分に向けさせた。トゥヒムの視線を連れてリュドラーに顔を向け、舌を出す。
「っ!」
ティティの舌上にある白濁した液体に、リュドラーは喉を鳴らした。トゥヒムのかけらがそこにある。ティティは指に液を絡めて、その味を思い出したリュドラーの舌に移した。
「ふっ……、んっ、ん、ん……、ふ、んぅうっ」
口内にトゥヒムの味を広げられ、リュドラーは目を細めた。ティティの指は緩慢に、けれど確実にリュドラーの口腔にある性感帯を刺激する。リュドラーは舌を伸ばし、ティティの指からトゥヒムのかけらをすべて受け取ろうとした。
「んっ、んぅ……、うっ、ぅふ……、んっ、ん……」
従僕の手がリュドラーから離れる。ティティはリュドラーの口から指を抜いて立ち上がると、おもむろにリュドラーの唇に己の熱を突き入れた。
「うぐっ……」
喉奥を突かれて、リュドラーは目を白黒させた。頭を掴まれ固定され、乱暴に陰茎で口内をかき回される。
「おぐっ、ぐっ、んぶっ……、ふっ、んぐぅうっ」
とっさに口を閉じようとしたリュドラーの鼻がつままれる。呼吸のために口を開かざるを得なくなったリュドラーは、息苦しさに涙を浮かべて口腔を蹂躙された。滲む先走りとあふれる唾液が口の端を伝い、飲み込もうとする生理的な動きが陰茎をしゃぶらせる。
「んっ、ぅぐ……、は、ぐぅ、うっ」
うめきながら体を揺らし、唇を犯されるリュドラーの姿に、トゥヒムは体を熱くした。
「うらやましいかね」
トゥヒムの耳元でサヒサがささやく。トゥヒムはリュドラーを見つめたまま、わずかに首を動かした。
「あれを、したいかね」
「……ああ」
返事とも吐息ともつかぬ声を発したトゥヒムに、サヒサはさらに誘いをかける。
「高潔な騎士であったリュドラーが、あんなふうに……、いや、複数の人間に蹂躙されて、もだえる姿を見てみたいと思うのならば、その手配をしておこう」
聞こえているのかいないのか、トゥヒムは返事をしない。けれど恍惚に染まった彼の瞳を、サヒサは見逃さなかった。
ティティは薄笑いを顔に張りつけ、リュドラーの口腔を陰茎でかき回し続けている。リュドラーの口の端からこぼれた液体は、顎を伝って首を流れ、あるいはそのままポタリと床に落ちた。後ろ手に革の手錠をはめられているリュドラーは、息苦しさから逃れようと肩を揺らした。苦しさの奥にある快楽が、リュドラーの陰茎からとめどなく先走りをあふれさせる。革のハーネスはたっぷりと濡れて、脈打つリュドラーになじみ、締めつけた。
「ぉぐっ、う……、んふぅ、うっ、ん、ぐ、ふ」
痛むほどに屹立した陰茎が、解放してくれと叫んでいる。それは全身の望みとなって、リュドラーの魂をむしばんだ。
「ふぐっ、んぅうっ」
口内のものが自分の欲に感じられて、リュドラーは能動的にティティをしゃぶりはじめた。その変化に気づいたトゥヒムは、欲の渇きを覚えて喉を鳴らした。
「ああして、理性と本能の間を行き来させ、ゆっくりと肉体に快楽を、魂には愛玩される喜びを刻んでいくのだ。ティティはこれから自分に代わり、リュドラーを指導する。昼間に見た、従僕の手に乱される姿とは、あきらかに反応が違うだろう?」
クックッと喉を鳴らすサヒサに、リュドラーを見つめたままトゥヒムは問うた。
「サヒサから私が教わり、リュドラーを教育するのではなかったのか」
「君は商人としての勉学にも励まなくてはならないからな。その息抜きとして性奴隷の扱い方を覚える、ということだ。……ティティは下ごしらえをする役だと考えればいい」
「よく、わからない」
「リュドラーを材料……、そう、綿に例えるとしよう。綿はそのままでは、ただの綿だ。それを糸にし、機で織り、布にしてから服を作る。素材であるリュドラーの肉欲を引き出し、その身を充分にほぐしてから、愛玩されるにふさわしい形を作る。わかるかね」
「つまり私は布を服に仕上げる方法を、サヒサから教わるということか。ティティはそこまでの……、布になるまでの過程をおこなう役目だと」
「そのとおりだよ、トゥヒム。なあに、心配はいらない。ティティは熟練の技を持っている。君にもわかるだろう? 従僕の指に遊ばれていたときとは、リュドラーの顔つきが違っていると」
トゥヒムは涙のあふれる目じりを染めて、ティティの陰茎に喉を突かれるリュドラーの姿と、これまで目にしたリュドラーの痴態とを比べた。なにをどうすれば、これほどの違いがでるのか。おなじ淫靡な乱れでも、あきらかにリュドラーの放つ気配は違っていた。放つ気配が濃密であると言えばいいのか。
「おぐっ、ん、ぐ、ぶ……、うっ……」
無理やりであるはずなのに、リュドラーは嫌悪をしていない。むしろ喜んでいるのではないかと思う。あれほど乱暴な動きに見えるのに、どうして――。
(私も、あのようにリュドラーを乱せたら)
「若いな」
「あっ」
サヒサに握られたトゥヒムの股間は、しっかりと熱を帯びて硬くなっていた。
「明日の夜には、別の形でリュドラーを味わえるように調教させておこう。きっと気に入るはずだ」
そのままサヒサにしごかれて、トゥヒムは切ない声をあげた。
それを聞いたリュドラーは、快楽に混濁した意識で口内の陰茎と己の欲、トゥヒムの味を混ぜ合わせ、体を揺らしてしゃぶりついた。
「んぐぅ、ふっ、ん、、む……、はぁ、んぅうっ」
「ああ、ほら……、見たまえ。リュドラーが励んでいる。なんともいじらしいな」
「あっ、あ……、リュドラー」
トゥヒムは薄暗い欲望にときめき、両手で口をおおった。しごく手がサヒサではなくリュドラーの手であればいいのにと願いつつ、素直に欲をあふれさせる。
「ふぐっ、んくうぅ、はふっ、ぉぐ、ぅう」
必死にしゃぶるリュドラーは、射精欲にとりつかれていた。それを見下ろすティティが唇を薄くゆがめる。
「かわいい……、な」
その声はちいさすぎて、誰の耳にも届かなかった。
「ほら」
ささやいたティティはリュドラーの頭を押さえつけ、グッと奥まで陰茎を突き入れると身震いし、欲を放った。
「ぐっ、ぶ……、ぅっ、げほっ、げほ……、はぁ、あっ、ぐふっ」
むせるリュドラーの頭を撫でて、クスクス笑いながらしゃがんだティティは、リュドラーの口のまわりを指でぬぐった。
「こんなにこぼして……、行儀の悪い子だなぁ」
「うっ、ふぅ……」
「ふふふ」
「あっ、は、ぁあ」
隆起し続けている陰茎の先を撫でられて、リュドラーは鼻にかかった甘い声で啼いた。
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