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第18話
「感じているのだな」
サヒサの指摘に、トゥヒムは顔を上げた。リュドラーが目じりを赤くして視線をそらす。
「そうなのか?」
「それは……」
「素直に認めたまえ。それが性奴隷としての正しいあり方だ」
リュドラーは唇を真一文字に引き結び、目を閉じてうなずいた。
「そうか……、だから濡れているのか」
トゥヒムの息が陰茎の先にかかり、リュドラーはちいさく震えた。淡い官能がもどかしく、肌のすべてが微熱を浮かべて刺激を求めていた。
(俺は、どうしてしまったんだ)
何時間も愛撫を続けられたリュドラーの肌は、刺激に過敏になっていた。そんな自分にとまどうリュドラーの陰茎を、トゥヒムは愛おしく見つめる。
(私の手で、これをもっと高めたい)
指先で先端の切れ目を撫でる。ブルッとリュドラーが震えて、熱い息が頭上から降ってきた。
「……、トゥヒム様」
「心地いいのなら、声を聞かせてくれ。リュドラー」
「は――」
おだやかに言われて、リュドラーはためらった。求められても、奔放に欲を示せるほど羞恥も理性も失ってはいない。しかしトゥヒムの望みならば、それを叶えるのが自分の役目だと、リュドラーは緊張しながらうなずいた。
トゥヒムの指が陰茎にかかり、リュドラーは脚を震わせた。
「は、ぁ……、ん、ふぅ」
クルクルと先端を撫でられ、クビレのあたりを擦られて、リュドラーは熱を上げる。すっかり勃ち上がった陰茎は、絶え間なく先走りをあふれさせた。
「ああ、リュドラー」
素直な反応を示す陰茎を、トゥヒムは慈しんだ。ギチギチとハーネスがきしむ。これを取って思い切りしごいてやりたい。
「なあ、サヒサ」
トゥヒムの望みを察したサヒサは首を振った。
「あわれみは調教の妨げになると、食事のときに教えたはずだ。彼はまだ、苦しみにまで達してはいない」
「私には、苦しんでいるように見える」
「なに、まだ余力がある」
サヒサが目配せをすると、従僕のひとりがリュドラーの背後に回り、膝裏を押してひざまずかせた。リュドラーは腕を背後に回されて、いつから用意されていたのか、革の手錠をはめられた。
「なにをするんだ」
眉をひそめたトゥヒムに、サヒサは笑いかけた。
「彼はまだ、未熟だ。しっかりと教育された性奴隷の仕事を、君に教えてあげるとしよう。――ティティを呼ぶように」
命じられ、ドア傍にいた従僕が出ていく。
「トゥヒムのたぎりを、熟練の性奴隷に慰めさせる。リュドラーはその仕事をしっかりと見て、自分の未熟さを痛感するといい」
トゥヒムは青くなった。
「リュドラーの前で、私のものを処理させるというのか」
「手本を見るのも教育には必要なことだ」
「だが……、私は」
(リュドラーにそんな姿を見られるなど)
「彼の乱れる姿を、君は覗いていただろう? 次は君が見られる番だ。なにより、性奴隷を調教する者が、この程度のことでためらってはならない。――わかるね」
納得できかねるトゥヒムの肩に、サヒサの手が触れる。
「いままで、メイドに処理をさせていたのだろう? それが性奴隷に代わるだけだ。気にすることはない。――君もそう思わないかね、リュドラー」
話を振られて、リュドラーは困った。なんとも返答しづらい問いだ。
「俺は……」
トゥヒムと目が合う。澄んだ瞳に困惑が浮かんでいる。トゥヒムもまた羞恥と理性に苛まれているのだと気づいて、リュドラーは腹をくくった。
「トゥヒム様が生きていくために必要なものならば、受け入れてしかるべしかと」
「リュドラー」
「トゥヒム様」
見つめ合うふたりに、サヒサはニヤリと頬をゆがめた。ティティを連れた従僕が戻ってくる。
「お待たせいたしました」
ティティは青みがかった銀髪の青年だった。純白のシースルードレスから、無駄のない筋肉におおわれた肌が透けて見える。まつ毛は長く、女性的な柔和さが全身から滲み出ていた。しかし彼がまぎれもなく男であることは、隆々とそびえる腰のものが示している。
「昨日、話していた客人とその従者だ」
サヒサの紹介に、ティティはガラス玉のようになんの感情もうかがえない瞳を、トゥヒムとリュドラーに投げかけた。
「それで、僕はなにを?」
感情のない平坦な声に、トゥヒムは彼が人形なのではないかと思った。それくらい生気が感じられない。リュドラーも彼のようになってしまうのだろうか。
「トゥヒムを慰め、リュドラーに手本を見せてやりなさい」
「仰せのままに」
うやうやしく頭を下げたティティは、猫のような足取りでトゥヒムの前に立ち、膝をついた。リュドラーは彼と入れ替わる形で横にずらされる。
ティティは横目でリュドラーを見てから、トゥヒムのズボンに手をかけた。
「緊張なさらず、どうぞ気を楽にしてください」
顔を上げたティティが、薄い笑みをトゥヒムに向ける。火傷しそうなほど冷ややかな艶めきに、トゥヒムは身震いした。
クスリと鼻先で笑ったティティが、トゥヒムのたぎりを取り出して手のひらに包んだ。
「しっかり彼を見ておくといい」
サヒサに言われなくとも、リュドラーの視線はふたりに注がれていた。トゥヒムの熱に、見知らぬ男が触れている。ムラムラとリュドラーの腹の底から嫉妬の熱が浮かび上がった。それに気づいたティティが、愉悦の笑みをリュドラーに向ける。カッとしたリュドラーを、従僕が手かせを引いて止めた。
従僕の手がリュドラーの胸筋にかかり、乳首をつまんだ。
「っ、あ」
いじられすぎた乳首は、すぐさま快楽を生み出した。
ちいさくうめいたリュドラーに、トゥヒムが欲の滲んだ視線を向けた。
ティティはふたりの様子を確認し、果実のように赤くみずみずしい唇を開いて舌を伸ばした。
チロチロと陰茎の先を舐められ、トゥヒムは短い息を吐いた。そよぐ舌技に全身が淡い官能に満たされる。
「は、ぁ……」
熱っぽいトゥヒムの声に、リュドラーの意識が愛撫される。
(俺は、アレを口に含んだ)
トゥヒムの欲をこの口で味わったのだと思い出し、リュドラーは欲熱をたぎらせた。ハーネスに包まれた陰茎が脈打ち、息苦しいと訴える。蜜嚢がうずいて、絶頂が欲しくなる。
「……はぁ、あ……、ふ、ぅ」
舌先で陰茎をなぞられるトゥヒムの切ない息に、リュドラーは唇を開いて舌を伸ばした。――トゥヒムの味が欲しい。
口内を擦られる心地よさを思い出したリュドラーの乳首を、従僕は丹念にいじくった。
「っ、ふ、ぁ……、は……、トゥヒム様」
「んっ、ぁ……、リュドラー」
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