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第17話

「っ、……」  トゥヒムのなめらかな指で陰茎を支えられ、リュドラーは息を呑んだ。城の奥で守り育てられてきたトゥヒムの指は、無垢な子どもの指よりも傷がなく滑らかだ。その手はナイフのほかに危険なものを持ったことはなく、剣を振り回していたリュドラーの節くれだった皮の厚い指とは、まったく違っていた。  トゥヒムはリュドラーの陰茎を、息がかかるほど近くで見つめた。 (これが、リュドラーの性の証か)  自分のものよりも大きい気がするのは体格の違いだろう。手の上にあるそれは思うよりも熱く、緊張のためか汗でしっとりとしていた。手触りはすべすべしており、色は肌よりも赤黒い。 (なぜだろう。――私はこれが、とても愛しい)  トゥヒムにじっと陰茎を見つめられ、リュドラーはどんな顔をしていいのかわからなかった。 (どうしてトゥヒム様は、これほど真剣にながめておられるのか)  他人の陰茎がそれほど珍しいのだろうか。  トゥヒムは陰茎を両手で包んだ。じわりじわりと陰茎の熱が上がっていく。 (リュドラーの命を感じているみたいだ)  トゥヒムが手の中の温もりを味わっていると、サヒサが「着せてやらないのかね」と声をかけた。陰茎に意識を奪われていたトゥヒムは、我に返って顔を赤らめる。 「ああ、そのためにリュドラーを呼んだんだったな」  名残惜しみつつ陰茎から手を離したトゥヒムは、太い革ベルトで構成されたものを手に取った。 「それは勃起をしてしまっては、苦しくなるシロモノだ。そのまま触っていては、リュドラーの陰茎は硬くなりすぎて、それを身に着けられなくなってしまう。まあ、そうなったモノをなだめてから着せたい、というのであれば好きに触っていてもかまわないがね」  笑みに声を震わせたサヒサに、トゥヒムはさらに顔を赤くした。 「す、すまない、リュドラー」 「いえ……」  謝罪にとまどうリュドラーは、安堵と落胆の両方を味わっていた。あのまま清らかなトゥヒムの指に導かれ、本能の開放を味わいたいと望んだ自分を恥じた。 (トゥヒム様の指を、俺の精液で汚してしまう)  ゾクリとリュドラーは震えた。陰茎に血が巡る。 (だめだ)  想像するなと自分に言い聞かせ、リュドラーは気を静めるために深い呼吸を意識した。  トゥヒムはわずかに持ち上がっているリュドラーの陰茎に、選んだ衣装をそっとかぶせた。それは萎えた状態の陰茎をくるんで使うもので、ちょっと硬くなっているリュドラーには着せづらい。ただでさえ不慣れな行為に、やりにくい状態の陰茎があるのだからもたつくのは当然で、トゥヒムは困った。 「貸してみたまえ」  横からサヒサが手を出して、少々強引に縦紐でリュドラーの陰茎を包むと、蜜嚢と根元を横紐で縛った。 「う……、っ」  きつく根元を縛られて、リュドラーはうめいた。腰にベルトが回されることはなく、これは局部のみで着用するものなのかと、リュドラーは己を見下ろす。完全に包まれているわけではない陰茎は、革の隙間からチラチラと肌を覗かせていた。横からならば、窮屈に押し込められている陰茎が見えるだろう。 「どうだね、トゥヒム。君はこの衣装を、どう見る」  サヒサに問われ、トゥヒムはなんとも答えられなかった。 「これは簡素であるがゆえに、便利でね。必要があれば、横からすぐに取り出せる」  サヒサが指を鳴らすと、リュドラーの背後に立った従僕が手を伸ばして、横からリュドラーの陰茎を押し出した。ぶるんと飛び出たリュドラーの陰茎を、従僕が握って擦る。 「っ、う……」 「ただし、これほど大きくなってしまっては、押し込めることは不可能だ」  しごかれ、太さを増したリュドラーの陰茎を、従僕が無理やり革ベルトの中に押し込もうとする。痛みにリュドラーが顔をゆがめると、トゥヒムが「わかった」と従僕の手を止めた。 「これは便利だが、実用的ではない、と言いたいのだな」  トゥヒムの目は勃ちあがったリュドラーの陰茎に注がれている。視線の奥に淫靡な光を見つけて、サヒサはほほえんだ。 「普段ならば、問題はないだろう。ただ、感度がいい場合は苦しむことになるがね」 「……感度?」 「敏感な人間と、そうではない人間がいるということだ。リュドラーは体の使い方を本能的に理解するタイプだろう」 「それはつまり、リュドラーの感度はいい、と言いたいのか」 「意識をするよりも先に、体が快楽の得方を覚えるのではないかな」 「んぅっ」  従僕に陰茎の先をつままれて、リュドラーは声を上げた。従僕は鈴口を指の腹で撫でながら、陰茎をゆっくりとしごく。 「ふっ、……、んっ、んう、う…………」  喉の奥で声を抑えようと、リュドラーは歯を食いしばった。すると従僕はあっさりと陰茎から手を離し、根元を縛る革ベルトを外した。リュドラーの陰茎は隆々とそびえて、先端を天井に向けている。 「は、ぁ……」 「こんな状態になってしまっては役に立たない。ほかのものを着せてやったらどうかね、トゥヒム」 「いい。俺が自分で……」 「リュドラー。君は奴隷だ。飼い主が着せ替えをするのもまた、愛玩動物である性奴隷の立派な役目だよ。――さあ、トゥヒム。いまのリュドラーに似合いのハーネスを着けてやるといい」  ハーネスと言うのかと、トゥヒムは従僕が差し出したカバンの中を覗いた。革のみでできたもの、金属の輪がついているものなど、いくつかある。 「ならば、これを」  なんとなく金属製のものは痛いのではないかと考え、トゥヒムはちいさな輪とおおおきな輪が短いベルトで繋がっているものを選んだ。 「使い方は、わかるかね」  サヒサに問われ、トゥヒムは首を振った。 「片側をペニスに、もう片側を太ももに着けるんだ」  なるほどとうなずいたトゥヒムは、リュドラーの反り返った陰茎を見た。ゴクリと喉を鳴らして、輪の留め具を外し、陰茎の幹にかぶせる。 「クビレに添わせて、しっかりと固定をするだけでいい」 「わかった」  トゥヒムは陰茎のクビレにハーネスの端を合わせて巻きつけ、留め具をはめた。怒張したリュドラーの陰茎に押されて、ギシギシと革がきしむ。苦しそうだなと思いつつ、トゥヒムは自分の下肢が熱くなるのを感じた。 「苦しくはないか、リュドラー」 「……はい」  正直に言えば、拘束がきつい。しかしそう答えて、どうなるというのか。トゥヒムはおおきな輪をリュドラーの太ももに固定した。陰茎と太ももが革紐で繋がる。 「ひとりで過ごさせる間はそれでいいが、ともに散歩をするときは、太ももの輪を取って手綱のように握るといい。やってみたまえ」  トゥヒムはうろたえ、リュドラーを見上げた。 (リュドラーを犬のように扱えというのか)  さきほどサヒサは愛玩動物と言ったな、とトゥヒムは思い出す。性奴隷というものが、どういう立場であるのかだんだんとわかりかけてきたが、騎士としてのリュドラーしか知らないトゥヒムは素直に受け入れられなかった。  情けない表情をするトゥヒムに、リュドラーはほほえんだ。 「どうぞ。ご遠慮なさらずに」  ここは自分が余裕を見せなければと、リュドラーはうつくしい主の愁眉を開くために落ち着いて語りかけた。 「さあ、トゥヒム」  サヒサにも促され、トゥヒムは着けたばかりの輪をリュドラーの太ももから外して握った。 「軽く引いてみるといい」  サヒサに言われるままに軽く引けば、リュドラーの陰茎が揺れた。 「もっと強く。馬を御するときに、そんな力では言うことをきかせられないだろう」 (リュドラーを……、馬とおなじ扱いにしなければならないのか)  覚悟を決めて、トゥヒムは強く引いた。 「んぅっ」  うめいたリュドラーの体が揺れて、トゥヒムに近づく。クビレの裏を圧迫された陰茎がドクリと震えた。それがトゥヒムの眼前にくる。先端に、わずかに先走りが滲んだ。 「痛かったか、リュドラー」 「いえ」  さきほどの声は痛みでなければ、なんなのだろうとトゥヒムは思う。陰茎の先がほんのりと濡れている。 (見ているだけでも、痛々しい)  だが馬は、轡をはめられ手綱を引かれても痛がらない。 「ハーネスは細心の注意を払って作られている。多少強く引いたところで、傷などつかないから安心したまえ」 (ならば、いまの声は……)  トゥヒムはリュドラーの脈打つ陰茎をながめた。

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