親友のことを知ったのは、大学サークルの新歓コンパが最初だった。 自己紹介の時に同郷と知り、話してみれば同じ高校で。 お互い知らなかったことに周りは驚いていたが、俺たちが通っていた高校は今時珍しいマンモス校で、同じクラスにならなければ、よっぽど有名人でないかぎり知らなくてもおかしいことではない。 それでも、周りは俺が親友のことを知らないならまだしも、親友が俺を知らないなんて、と不思議がりながら笑っていた。 自分で言うのもおかしいが俺は周りから持て囃される容姿をしていて、対して親友は凡庸な顔立ちで、みなまでは言わずとも、そういう意味を含んでいることはわかった。 初対面にも関わらず不躾すぎる物言いに呆れたが、当の本人は特に気分を害するわけでもなく本当にな、と笑っていた。 入ったサークルはテニスサークルで、結構緩めのサークルだった。 俺も含め何人も初心者がいるようなサークルで、テニスの強豪校だった母校の元テニス部の親友がこのサークルに入ったことは不思議だったが、親友はどうやら押し付けられたらしい初心者のコーチを楽しそうにしていた。 俺は俺で、何か軽く体を動かしたいと思い適当に入ったテニスサークルだったが、親友に教わりながらテニスをするのは思いの外楽しかった。 初心者もある程度慣れると親友のコーチングを離れ経験者と試合をするため徐々に初心者コースの人数は減っていったが、俺は相変わらず初心者コースに通いつづけた。 初心者だったものの運動神経は悪いほうではなかったので、序盤である程度打てるようになっていたから周りは一緒にテニスをしたがったし親友もずっとここにいることに不思議がっていたが、周りの誘いは断り初心者コースでのんびりとサークルに勤しんだ。 そうしているうちに、いつの間にか俺たちは自他共に認める親友となり、サークル内でもニコイチと言われるほどになっていた。 中には不釣り合いだとかそんな事を大っぴらに言う人間もいたが、俺も親友も気にすることなどなかった。 そうして一年の月日がたち、次は俺たちがサークル勧誘をすることになった。 例にも漏れず、俺たちは二人でのんびりと構内を歩きまわった。 ありがたいことに俺の容姿のおかげで勧誘のノルマには困らないし、本当にテニスに興味のある新入生は強豪テニス部出身の親友の話に真剣に耳を傾ける。 今日の勧誘のノルマを早々に達成していた俺たちは、学食のカフェテリアで涼もうと学食に向かっていると、「先輩っ」と元気な声に足をとめた。 二人振り向くと、いかにも新入生らしい可愛い男の子がこちらに向かってきた。 「大塚、この学校に入ったのか。久しぶりだな。」 返事をしたのは親友で、心なしか声が弾んでいる。 「そうなんですよ。てか、先輩こそどの大学に進学したか俺たちに言わずに卒業しちゃったからみんな呆れてましたよ。卒業後に遊びに来てくれた部長から教えてもらいましたけど。」 「そうだったっけか？」 完全に置いてけぼりの俺をよそに盛り上がっていた二人だったが、親友が蚊帳の外になっている俺に気づいて彼を同じ高校の部活の後輩だと紹介した。 紹介された子は慌てて頭を下げて自己紹介と挨拶をした。 その様子があまりに一生懸命に見えて思わず笑ってしまった。 それが、あの子との最初の出会いだった。