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第2話
親友の後輩であるあの子は親友がいるサークルなら楽しそうといってテニスサークルに入った。
親友の後輩だから当然強豪テニス部の出身で、その実力は素人の俺でもわかるくらいに強かった。
親友は今年もまた初心者コースのコーチとなり、俺はさすがに初心者コースには入らず、他のサークル部員と試合や練習に勤しむことになった。
同郷のよしみで後輩とはすぐに打ち解けた。
学部も同じということもあり、後輩の中では一番といっていいほどつるむようになった。
そもそも彼は人懐っこく、だれとでも仲良くなれるようで、サークル内でも男女問わず人気があるようだ。
そんな後輩が尊敬してると言って憚らないのが親友で、そんなところも好感をもてる要因のひとつだ。
容姿や周りの評価にとらわれず自分の信念を突き通す姿は正直格好いいと思えたし、何より一生懸命な姿は愛くるしいと思えた。
親友と一緒にいる時は不釣り合いだと言っていた彼らがお似合いだと称賛した。
やはり容姿にしか興味がないのだろう彼らに呆れてしまったが、後輩に密かに好意をもっていた俺には嬉しい称賛でもあった。
親友とはサークルでの練習コートが離れていて、学部も違うためなかなか一緒にいる機会も減っていった。
最初のうちはお互い連絡をとりながら会っていたが、以前のようには一緒にいる機会も少なくなっていったように思う。
それでも一緒にいれば以前と変わらず居心地が良く、この空気感はやはり親友との間だけの特別な関係なのだろう。
新入部員が入って3ヶ月ほどたった頃、初心者コースの全員が経験者と合流することになった。
1年前はコーチが同級生の親友ということもあり、俺も含めだらだらと半年をすぎるくらいまで初心者コースが設けられていたが、今年の部員は優秀らしい。
先輩のコーチが上手だからですよ。と相変わらず親友を尊敬している後輩に、大いに同意しながも親友に若干の嫉妬。そんな自分に苦笑する。
おおよそ3ヶ月以上ぶりに普通のテニスができる親友と、久々にテニスの試合をしたいと親友をコートで待っているも親友がその日サークルに来ることはなかった。
出欠確認をしているサークル長に確認すると、アルバイトのため欠席すると連絡があったそうだ。
緩めのサークルのためアルバイトやその他の用事で休む部員は少なくはないが、今まで親友がアルバイトを理由に休むことはなかったため不思議に思ったが急にシフトに穴が空いてしまったとかでピンチヒッターでアルバイトに行ったに違いない。親友はそんな男だ。
しかし親友はそその日以降、アルバイトを理由にサークルにほとんど来ることがなくなってしまった。
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