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第9話

… 親友とは会うたびにセックスをした。 こんなことになって上手く会話することはできないけれど、親友のことを大切に思っていることを伝えたくて優しく抱く。 セックスの間俺の腕の中にいる親友は幸せそうな顔をして手をまわし、それはまるで恋人どうしのような感覚になった。 しかし親友はことが終わると毛布にくるまってたぬき寝入りをしてしまう。 そんな親友を見るのが嫌で、毎回たぬき寝入りに気づかないふりをしてシャワーを浴びてすぐにアパートを出てった。 いつかはこんな関係を止めないといけないと思いつつ、親友がまた離れるのが怖くて、きちんと話し合うことを避けていた。 … サークルが終わり親友に連絡しようとすると、後輩に呼び止められた。 「先輩のこと、知っていますか?」 唐突に言われた言葉に、何が、と答える。 後輩は切羽詰まった様子で、嫌な予感がする。 「先輩、留学するそうです。」 その言葉に頭が真っ白になる。 先日も会ったけど、そんな素振り少しもなかった。 「俺も偶然知ったんです。誰にも言わずにいなくなろうとしてたんです。」 「どうして」 「わかりません。でも、先輩はきっと勘違いして傷ついているんだと思います。」 そう聞いていてもたってもいられず、親友のアパートへと向かった。 突然のことに親友は驚いていたが、息切れしていた俺を見て部屋へと入れてくれた。 「留学するって聞いたけど。」 唐突に話し出した俺に親友は、観念したようにため息をついた。 「うん、そうだよ。」 「どうして何も言わずに決めたんだ。」 「ごめん。」 そういって、目を反らす親友。 「もう、決定したことなのか。」 「そうだよ。1週間後にはこのアパートも引き払う予定。」 「どうして、留学なんか。今まで言ったことなんてなかったじゃないか。」 そう言って、最近は会話らしい会話をしていなかったことを思い出す。 いつも気まずくて話せなくて、代わりに抱いて気持ちが伝われば、なんて都合の良いことばかり思ってきた。 きっかけは最悪だけど話す機会ができた今、思いの丈をぶつけた方が良いのではないか。 親友がこの場所を離れてしまうというなら、なおさら。

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