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第10話
「今さら遅いだろうけど、俺もお前のことが好きだ。本当は、離れてほしくなんかないよ。」
留学を取り消すなんてできないだろうけど、その気持ちを伝えないと、これから先会えないような気がした。
その言葉を聞いた親友は、一瞬、驚いたようにこちらを見たあと、目をそらした。
「そんなこと言わせて、ごめん。」
本心を伝えたのに伝わっていないことに焦りを感じる。
親友は、俺が気を遣ってこの言葉をかけたと思っているのか。
「噂であの子と付き合ったって聞いたよ。あの子は否定していたから、デマだったのかもしれないけど。でも、俺はお前のこともあの子のことも大切だから、わかるよ。お前たちは両思いだし、お似合いだよ。」
「後輩とは、本当になんでもないんだ。俺が好きなのはお前だ。」
気持ちが伝わってほしくてそういうと、親友は一瞬驚いたように目を丸くし、笑った。
「なにそれ」
「、、、え?」
「、、、ううん、それは勘違いだよ。お前が俺のことを好きなんてないんだから。きっと、急に留学を知ったから気が動転してるだけだよ。一年したら帰ってくるし、帰ってきたらまた遊ぼうな。」
「あ、ああ。、、、わかった。」
親友にはまだ伝わっていないようだったけれど、留学から帰ってきてもう一度伝えたら本気とわかってくれるだろう。
一週間後、親友は留学してしまった。
親友は大げさだと笑ったが、空港で一年後の約束をとりつけた。
俺はもう一度、同じことを言うつもりだ。
勘違いなんて言わせるつもりはない。
おわり
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