2 / 2

竜一と、情事のあとで

薄闇の中で(くゆ)る白い煙。 浮かび上がっては消える赤い炎。 その小さな灯に一瞬照らし出される、竜一の横顔。 「……」 その姿を、ベッドに横たわったままぼんやりと眺める。 竜一は、本当に格好いい。 椅子に座ってただ煙草を吹かしているだけなのに。何処かの絵画や写真のモデルのようで……つい、魅入ってしまう。 ああ──さっきまで、あの逞しい身体に抱かれてたんだ…… そう思ったら、情事の時より恥ずかしい。 いっぱい愛されて、愛されすぎて……気怠い身体。 白い柔肌に幾つも刻まれた、赤い印。竜一のモノだというその証を隠すように、腰元に掛けられた薄手のケットを引っ張り上げる。 静かな空間に響く、肌と布の擦れる音。 この音さえ、酷く淫らに聞こえてしまうのは、何故だろう。 「………どうした?」 もぞもぞ動く音のせいか。それとも、じっと見据える僕の視線か。竜一が、此方に顔を向ける。 柔らかくて、優しい声。 「ううん」 「……何だよ」 「その煙草、美味しいのかなって」 「………、どうだろうな」 考えるように煙草を見つめた竜一が、シニカルな笑みを浮かべた後、そう言って誤魔化す。 もう一度口に咥えられる煙草。一瞬だけ明るく燃えるその先端が、また静かな灯火に変わる。 顎先を少し持ち上げた竜一が、ふぅ……っと天に向かって煙を吐く。灰皿にぎゅっと揉み消す。 「飲むか?」 灰皿の近くに置かれた、ミネラルウォーター。 「………うん」 そう答えれば、煙草を揉み消した竜一が腰を上げ、そのペットボトルを拾う。 だから僕も、重い身体を何とか起こす。 「……!」 ──トロッ 下腹に力が入ったせいか。竜一を受け入れた所から、まだ残っていた蜜液が溢れ出てしまった。 濡れてしまったシーツ。……後で、洗わなくちゃ。 「ほら」 キャップを一度開け、緩く締め直したそれを竜一が渡してくれる。 そのさり気無い気遣いが……嬉しい。 「寒くねぇか?」 ケットが滑り落ち、剥き出しになった背中。ベッド端へと腰を下ろした竜一がケットを引っ張り上げ、優しく包んでくれる。 「………うん」 恥ずかしくて俯けば、竜一が優しく肩を抱き寄せてくれた。 温かい── こんな、穏やかな夜が……いつまでも続けばいいのに── そう願いながら、そっと竜一に頭を預けた。 END

ともだちにシェアしよう!