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竜一と、情事のあとで
薄闇の中で燻 る白い煙。
浮かび上がっては消える赤い炎。
その小さな灯に一瞬照らし出される、竜一の横顔。
「……」
その姿を、ベッドに横たわったままぼんやりと眺める。
竜一は、本当に格好いい。
椅子に座ってただ煙草を吹かしているだけなのに。何処かの絵画や写真のモデルのようで……つい、魅入ってしまう。
ああ──さっきまで、あの逞しい身体に抱かれてたんだ……
そう思ったら、情事の時より恥ずかしい。
いっぱい愛されて、愛されすぎて……気怠い身体。
白い柔肌に幾つも刻まれた、赤い印。竜一のモノだというその証を隠すように、腰元に掛けられた薄手のケットを引っ張り上げる。
静かな空間に響く、肌と布の擦れる音。
この音さえ、酷く淫らに聞こえてしまうのは、何故だろう。
「………どうした?」
もぞもぞ動く音のせいか。それとも、じっと見据える僕の視線か。竜一が、此方に顔を向ける。
柔らかくて、優しい声。
「ううん」
「……何だよ」
「その煙草、美味しいのかなって」
「………、どうだろうな」
考えるように煙草を見つめた竜一が、シニカルな笑みを浮かべた後、そう言って誤魔化す。
もう一度口に咥えられる煙草。一瞬だけ明るく燃えるその先端が、また静かな灯火に変わる。
顎先を少し持ち上げた竜一が、ふぅ……っと天に向かって煙を吐く。灰皿にぎゅっと揉み消す。
「飲むか?」
灰皿の近くに置かれた、ミネラルウォーター。
「………うん」
そう答えれば、煙草を揉み消した竜一が腰を上げ、そのペットボトルを拾う。
だから僕も、重い身体を何とか起こす。
「……!」
──トロッ
下腹に力が入ったせいか。竜一を受け入れた所から、まだ残っていた蜜液が溢れ出てしまった。
濡れてしまったシーツ。……後で、洗わなくちゃ。
「ほら」
キャップを一度開け、緩く締め直したそれを竜一が渡してくれる。
そのさり気無い気遣いが……嬉しい。
「寒くねぇか?」
ケットが滑り落ち、剥き出しになった背中。ベッド端へと腰を下ろした竜一がケットを引っ張り上げ、優しく包んでくれる。
「………うん」
恥ずかしくて俯けば、竜一が優しく肩を抱き寄せてくれた。
温かい──
こんな、穏やかな夜が……いつまでも続けばいいのに──
そう願いながら、そっと竜一に頭を預けた。
END
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