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Just the beginning ⑩

 特別ゲートに辿り着いて時刻を確認する。クライアントが乗る専用機がもうすぐ到着するはずだ。章良はゲートのスタッフに許可証と身分証を提示して、ゲートを通過した。専用機とゲートの接合部分で到着を待つ。  ふと窓から滑走路を見ると、クライアントが乗っていると思われる専用機がゆっくりとゲートに向かってきた。  専用機がゲートと接合されるのを少し離れたところから見守る。搭乗口が開いた。章良が周りに注意しながら搭乗口を見つめていると、男がひとり降りて来た。  若いな。  章良が思った最初の印象だった。重要な化学兵器を作るような人物なら、経験豊富な中年のおっさんかと思っていたのだが。  なんか……全然金持ちインテリに見えねーな……。  出てきた男は、おそらく20代後半から30代前半。章良と同じぐらいの年齢に見えた。黒縁眼鏡をかけていて、今まで爆睡してました、と丸わかりの寝癖がばっちりついた髪のまま、大きな欠伸をしながらだらだらと歩いてくる。服装もよれよれのグレーのスウェットの上下にサンダルで、部屋着のまま出てきたような感じだった。口から出ていた涎をスウェットの袖でごしごし拭いている。  あ、でも、男前だな。  一見、眼鏡で目立たないが、良く見ると、色白の顔にバランスよく各パーツが並んでおり、きちんとしたらそこそこ綺麗な顔をしているように見えた。  あれ?でも。  この男。どこかで会ったことがあったか?  はっきりとはわからないが。男に見覚えがある気がした。記憶から捻りだそうとしたが、思い出せない。  気のせいだろうか。

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