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Just the beginning ⑫

「もう、ガッちゃん。だから、説明しないと」 「説明って、ただ、ちょっと調べただけじゃん。アキちゃんの過去」 「俺の……過去?」 「あ、そうなんです。警護をお願いする方なので、一応素性を調べさせてもらったんです」  と、有栖が説明を加えた。 「それはわかりました。ですが、警護の経歴はまだわかりますが、そんな幼少時代の僕の経歴など調査が必要ですか?」 「念のため、です」  こちらがまあいいか、と思わざるを得ない仏のような笑顔を有栖に向けられ、言葉を止める。納得はいかなかったが、章良はそれ以上の追求ができなかった。  やはり、何か違和感がある。  しかし、それが何かはっきりとしない。黒崎、という名のこの男の、馴れ馴れしさはなんだろう。初対面とは思えないようなこの態度。調べたと言っていたが、章良ですら完全に把握することができなかった幼少時代をそんな簡単に調査できるだろうか。  礼儀に煩い章良からすると、印象は最悪だが。先ほど感じた、どこかで会ったような感じも気になるし。この男は一体なんなのだろうか。  それに。  章良には、黒埼についてもう1つ引っかかることがあった。しかし、それはまだ確信が持てない。 「とりあえず、希望された車を手配してあります。駐車場までどうぞ」  2人を引導しながら特別なルートで駐車場まで向かう。後ろから黒崎のいやらしい視線を全身に感じた。その視線に落ち着かないまま歩き続ける。 『可愛い』  黒崎と会ったときのあの反応からして、黒埼はおそらく同性愛者か両性愛者だろう。そして、どうやら章良は黒崎に気に入られたらしい。  これ、ずっとこんなんなのか。  この先の警護が思いやられて、章良は心の中で大きな溜息を吐いた。

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