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Don't believe in never ⑤

 翌日の休日は、ジョギングをしたり読書をしたりして夕方までのんびりと過ごした。尚人も涼も仕事だったので、久しぶりに静かな1人の時間を過ごすことができた。  夕方近くになって、例の消防士の男が車で迎えにきた。軽く挨拶をして、男の車に乗り込む。どこに行きたいかと聞かれたが、特になかったので男に任せた。男は少し考えて、ならば山道へドライブはどうだと提案してきたので了承した。  車を走らせる間も会話は弾み、晃良は久しぶりのデートらしいデートを楽しんでいた。夜景スポットとして有名な山のスカイラインを快適に走っていく。 「うわ、綺麗だな」  展望スポットへ日の入り時刻に到着し、そこから見える夕日に照らされた綺麗な町並みを2人で眺める。平日ということもあってか、周りには数える程しか人影がなかった。夕日が沈んで辺りが暗くなるまで、そこにあった木製のベンチに腰かけて景色を楽しんだ。夕日でくすんでいた街の明かりが、ここぞとばかりに主張をし、輝き出した。  緊張感のある仕事を普段しているせいか、こんな風に何も考えずゆったりとした時間を過ごせるのは、晃良にとってはとても有り難いことだった。隣で消防士の男も何も言わず晃良が飽きるまで付き合ってくれた。 「付き合わせてごめんな」 「全然。俺も久しぶりにのんびりできた気分だったし」  会話をしながら駐車場へと向かった。車に戻って、夕飯をどこで食べようかと相談する。 「飯、どうする?」 「ん……」  男は、何か考えている様子で、なかなか答えようとしなかった。怪訝に思い、もう一度聞き直す。 「どうした? 飯、食いたくないか?」 「うん……あの……乾さん」 「さん、なんて付けなくていいから。晃良でいいよ」 「じゃあ、晃良くん」 「まあ、それでもいいけど……何?」 「……昨日の今日でこんなこと言うのは早いかなと思ったんですけど……でも、俺、晃良くんにその……惚れたみたいで……」 「…………」 「もし晃良くんが良かったら、付き合ってもらえたらと思って……」 「……いいよ」 「本当ですか??」  男は顔を輝かせて晃良を見た。 「俺で良かったら」 「もちろんです! お願いします!!」  男が嬉しそうに笑顔を見せて、お辞儀をした。 「で、飯どうする?」 「あの……それで……」  男はちょっと言いにくそうに言葉を濁した。その男の表情で何が言いたいかピンときた。 「つまり、ヤりたいんだろ?」 「いや、あの、そのっ、それはそうなんですけど、ちょっと展開早すぎるかと思って……」  しどろもどろで弁明しようとする男を見て、晃良は笑った。 「ただヤりたいから言ってるわけじゃなくて、あの、その、晃良くんといたらなんていうか、我慢できなくて……」 「なにそれ。俺から変なフェロモンでも出てんのか」 「あ、でも、そんな感じなんです。色気っていうか……。可愛さっていうか……」  すみません、と男が謝った。 「でも、ほんとに、できたらで……。晃良くんがまだそんな気になれないんだったら、無理にはしたくないし……」 「いいよ」 「え??」 「行くか。ホテル。そこで飯も食えばいいし」 「でも……」 「いいから。行こ」  やっぱりこうなったか、と走り出す車の中で思う。自分も相手も子供じゃない。うまく話がまとまったら、早いとこ段階を進めたいと思うのは自然なことだろう。

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