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Don't believe in never ⑫
「尚人……」
「ん?」
「気持ちは有り難いんやけどさ。それは止めといた方がいいと思うわ」
「なんで?……」
そこで、晃良を見下ろす尚人の目が、はっと見開かれた。
「な? 止めといた方がいいだろ?」
「……そうだね」
「黒埼。その物騒なもの、まだ持ってたのか?」
そう言って、尚人の後ろに佇む人影に話しかける。黒埼が、尚人の後頭部に銃を押しつけて立っていた。
「こんな時のためにな」
「黒埼くん、冗談だから。それ、引っ込めてくれない?」
「……冗談じゃないだろ。お前、俺が来んかったら、アキちゃんとヤってただろ」
「ヤってないって。どっちにしろ、晃良くんにヤる気なかったし。ね? 晃良くん」
「どうかな……」
「ちょっ、晃良くん! それ、全然助けになってないから!!」
「アキちゃん……今日ので懲りたと思ったら……今度は久間……」
殺すっ、と呟いて、黒埼が銃を尚人に強く押しつけた。
「いやいや、ちょと、待って。晃良くんっ、助けてっ」
「黒埼……ここで流血騒ぎになりたくないし、止めてくんない? 俺、もう寝たいんだけど」
それにしても。全く気配なく部屋に入り、尚人の後ろに回り込んできた。やはり只者ではない。
黒埼くん怖いから、俺、有栖くんと寝るっ!!そう言って、尚人が有栖の眠る寝室へと出ていってしまった。晃良は心の中で溜息を吐く。
「お前の望み通りになったな、黒埼」
「え? 何のこと?」
黒埼が、とぼけたフリをしてさっさとベッドの中に入ってきた。後ろからぎゅうっ、と抱き付かれる。それに抵抗するだけの力が疲労困憊の晃良には残っていなかった。されるがまま放っておく。
「久しぶりにアキちゃんと寝られる」
その言葉に晃良は疑問に思う。
「久しぶり?」
「ん。よく昔、こうやって寝てたから」
「…………」
小学生の時の黒埼と晃良は一体どんな関係だったのだろう。きっと黒埼に聞いても答えてくれないだろうが。
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