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Don't believe in never ⑪

「晃良くん、電気消すよ」 「うん」  結局、晃良は尚人の部屋にお世話になることになった。黒埼の未練がましい視線を浴びながらさっさと寝室に入る。クイーンサイズの尚人のベッドにパジャマで潜り込んだ。普段は下着1枚で寝ることも多いのだが、一応相手がいるので今日はパジャマを身に着けることにしたのだ。電気を消した後、尚人もベッドに入ってきた。 「そういえば、晃良くんと一緒に寝るのって初めてじゃない?」 「そうだったか?」 「うん。同じ部屋とか雑魚寝とかはあったけど、同じベッドではないよ」 「付き合い長いのにな」 「そうだね」  尚人が暗闇の中、ふっと笑う気配がした。 「晃良くん、結局、エッチできなかったね、今日も」 「そうなんだよなぁ。黒埼に邪魔されたからな」 「どれくらい振りだっけ?」 「うーんと、2ヶ月ぐらい?」 「そっか。晃良くんにしては長いね」 「そうだろ?」 「うん。なんやかんやで、晃良くんってモテるもんね」 「どうだろ? まあ、直ぐ振られるんだけど、直ぐ見つかんだよな」 「それって、男運はあるってことだよね、きっと」 「でもそのツキももうないぞ、きっと。黒埼に潰されるから」 「じゃあ、やっぱり黒埼くんとしたらいいじゃん」 「……嫌」 「嫌って言ってるわりには、なんか距離縮まってない?」 「……そんなことない」 「そう?」 「ただ……もし本当にあいつが、あの夢の中の子だったら、思い出してやりたいとは思ってる」 「……そっか」 「ん」  そこで急に、尚人が体を起こして晃良に覆い被さってきた。晃良は暗闇に慣れてきた目で尚人を見上げる。 「どした?」 「俺さぁ、思ったんだけど。晃良くんがそんなに欲求不満だったら、俺が手伝ってもいいよね」 「は? 尚人?」 「うん。だって、涼ちゃんは無理だけど、俺はできるじゃん。俺、晃良くんは全然いけるし」 「はあ……」  そう言われて改めて考えてみると、確かに尚人は男前だし、気も合う。近すぎてそういう対象として意識していなかったが、普通にどこかで会っていれば、そういう仲になっていたかもしれない。 「お前、固定は作んないんだろ?」 「そうだけど、晃良くんが本当に不満解消したいんだったら協力するよ。晃良くんが情のないエッチが嫌なのは知ってるけど、恋愛じゃなくても友情でもいいんじゃない? 別に」 「だから、それが『セフレ』なんだろ? お前の不特定多数の」 「まあ。でも、晃良くんは不特定多数じゃなくて、特別な『セフレ』にするから。大事にするよ」  そこで暫く見つめ合う。こんな風に尚人に迫られて、拒否できる奴はいるのだろうか。

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