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小話(ハロウィン編) クッキー・センセーション ②

 その後10分ほど1人で悩んでいたが、とりあえず常識を信じようと、晃良は思いきって『Treat』をクリックした。 「……なんだ、これ」  それはただの写真だった。黒埼の。カメラに向かって、どっかのスーパーモデルみたいにすました顔をした、カメラ目線の写真だった。切れ長の瞳でこちらを見つめ、斜めに構えて僅かに口角を上げて微笑んでいる。  もしかして……。自分自身が甘い『Treat』とか言いたいんじゃないだろうな……。  サム過ぎる。でも、黒埼だったらやりかねない。ならば。『Trick』は何だろう?不細工な黒埼の顔とか?散々見ようかどうか迷ったが。  ええいっ。  晃良は誘惑に負けた。いや、不細工な黒埼が見たかったわけではなくて。このメールのオチは一体なんなのか、どうしても知りたかったのだ。晃良は『Trick』ファイルもクリックした。  ……なんだ、そういうことか。  そこには、黒埼は写っていなかった。写っていたのは有栖だった。舌を思いっきり突き出して、ヘビメタのポーズでカメラに向かって睨みをきかせている写真だった。普段、可愛らしさで売っている有栖が精一杯『怖さ』を演出しているらしかった。つまりは、『Trick』を選んだら怖いですよ、と言いたかったのだろう。  このなんの捻りもオチもないメールに、晃良は心底がっかりした。前のやすきよの件から薄々感じていたが。この2人の笑いの感覚はどうもずれていて、晃良には何が面白いのかどうしても理解ができなかった。メールを送ってくるのなら、せめて晃良が感心するような笑いのレベルだったらまだ我慢ができたのに。  時間の無駄だったと思いっきり溜息を吐いて、さっさとそのメールをゴミ箱へと移動させた。  しかし。これはほんの序幕にすぎなかった。

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