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Going out with you ④
「早……」
「当たり前じゃん」
翌日の早朝。マンションのインターホンが連打されて目が覚めた。尚人は数日泊まり込みでの仕事が入って留守にしており、涼は騒がしくても朝は頑として起きないので、晃良が渋々起きて対応したのだが。
インターホンのモニターには爽やかな(と本人は思っている)笑顔を見せる黒埼が映っていた。無言でオートロック解除をして、リビングのブラインドを開けると、黒埼が部屋の前にもうすぐ着くだろうというタイミングで玄関へと赴いて扉を開けた。
すると、先ほどと同じ笑顔の黒埼がすでにそこに立っていた。今日は黒縁眼鏡をかけている。服装は脚にフィットした黒のスキニーパンツに、グレーと黒のボーダーの薄手のニットセーターでモノトーンにまとめている。そのニットの上から薄手のロングコートを羽織って、つばのあるハットもかぶっていた。いつもよりは少し小洒落た格好をしている黒埼を、まだ寝ぼけた頭で見つめる。
「ジュンは?」
「今日、俺1人。急だったからジュンに後は任せてきた」
「そんな急いで来なくてもよかったのに」
「何言ってんの! 初めてのデートだし! しかもアキちゃんからのお誘だし! そんなのすぐ来るに決まってんじゃん!!」
と興奮気味に黒埼がやいやいと叫ぶように答えた。
やっぱり、デートだと思ったか。
メールには一切デートだとは書いてなかったが、晃良と涼の予想どおり、黒埼の頭の中で都合の良いように解釈されていたようだった。
「この前のハロウィンのときも、時間なくて結局次の日すぐ帰らなきゃなんなかったし、ずっとデートお預けだったしぃ~」
「はあ……」
「約束なんだから、守ってもらわないと~」
お前が権力を使って無理やりさせた約束だけどな。
という言葉は晃良の心の中に仕舞っておいた。
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