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Going out with you ⑫

 黒埼は少し考えるような表情をした後、ニヤリと笑って晃良を見た。 「やっぱ、教えられないかなぁ。怒られるし」 「……お前、なんでニヤついての?」 「でもぉ。アキちゃんが俺の家族になってくれたら、教えてもいいよ」 「は?」 「アキちゃんを信用してないわけじゃないけど。やっぱり関係ない人間には教えられないし。だけど、アキちゃんが俺の専属ボディーガードになってくれて、そんでついでに俺と結婚とかしてくれたら、もう隠す必要もないし」 「……いや、教えてくれなくていい」 「なんで? あんな興味ありそうだったくせに」 「てかさ、お前、そんな国家の極秘案件を簡単に漏らそうとしていいのかよ。結婚しようがなんだろうが、だめだろ、そんなあっさりは」 「まあ、国家の極秘案件……と言われればそうなのかな。だけど、まああと数年したら関係なくなると思うし」 「それ……あと数年で使用されるってことか?」 「え? うーん、どうだろ? まだできるかも分からないし。研究段階だから」 「……よく見えないな、実態が」 「そう? そんな複雑じゃないけど。だけど、今は極秘事項には変わんないから。知りたい奴いっぱいいるみたいだけどな」 「まあ、そうだろうな。だからお前、要人になってるわけだし」  そこでフォークに巻いていたパスタを一口食べる。そのあまりの旨さに驚いて、そのままほとんど会話もせず夢中で食べ進めることになった。黒埼もそんな夢中で食べる晃良を嬉しそうに見ながら箸を進めていた。  結局そのままパスタを食べ終えてしまった。のんびりとデザートを待つ間、晃良は質問を再開した。 「表向きの研究は何してんの?」 「ああ、脳関係の研究」 「……さすがインテリだな」 「そう?」 「お前って、研究所に勤めてんだろ? 立ち位置ってどこら辺なの?」 「俺? 今は、マネージャーだけど」 「それって凄いんじゃねぇの?」 「どうだろ? 他にもマネージャークラスはいっぱいいるし、そうでもないと思うけど。まあ、一応、所属研究所のトップだから、あんまり怒られないのはいいけど」  その代わり、下から凄え文句言われてそうだな。  勝手に抜け出したり、我儘を言ったり、好き放題している姿が目に浮かぶ。有栖が上手くフォローしているのだろうが、有栖がいなかったら黒埼はかなりの敵を作ったに違いない。  黒埼は昔からこんな我儘し放題な性格だったのだろうか。養子に出されたとき、黒埼の養父母はなぜ黒埼を選んだのだろう。 「なあ。お前の養父母ってどんな人たちなの?」 「ふつうのアメリカ人のおじさんとおばさんだよ」 「だけど、大富豪なんだろ?」 「まあ……何個か会社は持ってるよ。政界の知り合いも多いみたいだし。俺もよくパーティーとか付き合わされたわ」 「いい人たちか?」 「そうだな。俺がやりたいことは何でもさせてくれたし。医者になりたいって言ったときも、軍に入りたいって言ったときも、反対は一切なかったし」 「そうか」 「ん。だから感謝はしてるよ。全く血も繋がってない自分をちゃんと育ててくれたから」

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