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Going out with you ⑪
「で、アキちゃん、何が知りたいの?」
「は?」
「だって、知りたいんだろ? 俺のこと」
なんだ、ちゃんと聞いてたのか。
そう思いながら、晃良はさてどこから始めようかと考える。
「別にこれっていうのがあるわけじゃないけど。施設のときのことは俺が思い出すまで詳しくは教えてくれないだろうから、どっちかって言うと、離れた後のことが知りたい」
「離れた後のこと?」
「そう。お前がアメリカ渡ってからのこと。俺、まだなんにも知らないし、お前のこと。どういう生活してて、どういう風に今のこの変態ストーカー黒埼までなったのか」
「………変態ストーカーになったのは生活関係ないし。ていうか、なんで俺も認めてんの、変態ストーカーって」
「でも、周りに凄えヤバい変態野郎がいて、影響受けたかもしれねぇじゃん」
「違う。アキちゃんが好き過ぎて、我慢し過ぎた結果だから。どこにいたってこうなった」
「なるほどな……。変態に国柄は関係ないんだな」
「……アキちゃん、そんなことが聞きたかったわけ?」
呆れた顔で黒埼が晃良を見たタイミングで、料理が運ばれてきた。テーブルに置かれたところで、晃良は再び口を開いた。
「そしたら、質問してくから答えてくれる? その方が簡単だろ?」
「いいけど……」
「そしたら……年齢」
「29……ってそれも知らなかったの? アキちゃんと同学年だって」
「警護で見たお前の資料、ほとんど真っ白だったぞ」
「そうだった?」
ここでふと、涼が言っていた兄弟説は消えたな、と思う。まあ、最初からありえない説だったが。
「じゃあ、次。住所」
「……それ要る?」
「いや、アメリカ広いしさ。せめて州ぐらい教えろよ」
「メリーランド州だけど……」
「メリー? ってどこだったっけ? なんか羊みたいだな」
「……言うと思った。東部の方。ワシントンDCの隣」
「ああ……なんとなく分かった。で、研究してんだよな? 今は」
「まあ……」
「何の?」
「……それ、どっちの聞いてんの?」
「裏のも教えてくれんの?」
「教えたらだめだって言われてるからだめだけど……知りたい?」
「知りたい」
もし、黒埼が本当に国家の秘密兵器に携わる研究をしているのなら、どんなものなのか興味はある。もの凄く強力な化学兵器だったら、それこそ世界の情勢が変わるきっかけになるかもしれないのだから。
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