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Touched on the past ③

『なあ、これ見て』  1週間前の夜。そう言って、シャワーを終えた涼が浴室から出てきたのが事の発端だった。ソファで尚人とテレビを見て寛いでいた晃良は、涼の掌にちょこんと乗っている小さな物体を覗いた。 『あれ? これ……』 『これ、カメラだよな。小型の』 『どこにあった?』 『風呂のシャンプーとか置いてある棚んとこ』 『……どういうこと?』  3人で顔を見合わせて、すぐに状況を理解した。晃良は超特急で浴室に向かい、隅々まで鬼のように調べた。結果、見つかったカメラは3台。 『3台もあったの? どこに?』 『……脱衣所の棚、その反対側の壁にあるコンセント横、浴室のシャワーヘッド近く』 『うわぁ。全てのアングルをカバーしてるよね、それ』 『ほんと、あの人ストーカーだな』 『…………』  掌に納めたカメラを見つめたまま、晃良はショックで言葉を失った。あの変態野郎の黒埼は、一体いつから晃良の入浴シーンを覗いていたのだろうか。おそらく、以前晃良宅へ泊まっていった際に仕掛けられたのだろう。そんな動きには全く気づかなかった。晃良の背筋がぞっとする。 『晃良くん、晃良くんの寝室も調べた方がいいよ』  そう尚人に言われて、自分の寝室へと走る。目を凝らして探し回ること30分。  あいつ……殺す。  晃良の掌には、更に5台のカメラが増えていた。 『……晃良くん、大変だね』 『……今頃気づいたか?』  その時、唐突に晃良の携帯が鳴った。画面を確認しなくても、誰なのか見当はつく。大体、晃良の携帯番号を本人には教えたこともないのに。本当は無視してやりたいのだが、文句の1つでも言わなければ気が済まない。晃良は携帯をひっつかむと電話に出た。 『おまえっ……「ちょっと、アキちゃん!! カメラ勝手に回収しないくれる??」』  開口一番に文句を言おうとした晃良の言葉は、黒埼の馬鹿でかい抗議の声に無残にも消えていった。 『……はあ? 何言ってんだ、てめぇ! 勝手にカメラ仕掛けといてなんだその態度は! まず、すみませんだろ、この変態白豚野郎が!!』 『はあ?? こっちこそはあ??なんだけど!! 変態は認めるけど、まだ豚じゃないしっ!!』 『変態は認めるんかいっ!』 『そこはどうでもいいから。とにかく、カメラ戻して』 『するわけねぇだろ、バーカ。勝手に俺の裸を堪能した罪は重いからな』 『いいじゃん、それくらい。それに、アキちゃんも燃えるでしょ? これから。俺に見られてるかと思うと』 『……見たのか? ……その……俺の……』 『当たり前じゃん。アキちゃんのあの、イく時の顔、可愛いかったしぃ』 『……きもい』 『きもくない。ほんとに可愛いいから、アキちゃんのエッチな顔』 『……とにかく。もう見せねぇから』 『ええ~。アキちゃんのケチ。それくらいのサービスいいじゃん。アキちゃんとのエッチお預けさせられてんだから』 『残念だったな。これで一生お預けだな』 『この前は甘えた顔で、心の準備ができるまで待って、って言ったじゃん』 『あんなの、撤回だっつーの!』 『……アキちゃん』  電話の向こうの黒埼の声音が変わった。その低い重圧感のある声に、危機感を覚えて一瞬ひるむ。

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