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Touched on the past ⑤

 豪華な夕食を部屋で満喫した後、夜の散歩に出た。浴衣姿で温泉街を歩いていくと、昼間よりも更に女の子たちの視線がこちらに注目しているのを感じた。浴衣効果だな、と晃良はイケメン度の上がった尚人と涼の背中を見ながら1人納得する。 「お腹いっぱいだわ~」 「食い過ぎだろ、尚人」 「だっておいしいのばっかりだったしさ。涼ちゃんはもうちょっと色々食べないと。肉ばっかり食べてたし」 「あれだけ量あったら、食いたいもんから食わねぇと後悔するから」 「で、結局、肉食べた時点でお腹いっぱいになって他の食べられなかったんでしょ?」 「そう」  涼ちゃん、小食すぎ~、お前が大食いなんだろーが、と中身のない2人の会話を聞きながら、晃良はのんびりと散歩を楽しんだ。  この旅行が終わったらまたしばらくは休暇がない。今度ゆっくりできるのはいつになるのだろう、と晃良は考える。ふと、思い出したくない黒埼の顔が浮かんだ。  先月会った時は、残念ながら昔のことを思い出すことはなかった。それもあって、次のまとまった休みが取れたら、思い出すための手がかりを探しに行こうと考えていた。今回は、涼の仕切り直ししようぜ攻撃に根負けし、自分もゆっくりしたかったのもあって温泉旅行を選んだが。 「晃良くん、酒とつまみ買ってこー」 「うん」  距離が空いてしまった涼たちへと、足早に歩いて追いついた。温泉街にちんまりと佇む小さなスーパーへと入店する。  そう。黒埼のために、そうやってできる限りのことはしてやりたい。そう思ってはみるのだが。  してやりたくなくなんだよな。こういうの目の当たりにすると。 「お帰り、アキちゃん」 「みんな、遅かったねぇ」  自分たちの部屋に戻ると、黒埼と有栖が当たり前のように露天風呂に入って寛いでいた。目だけで尚人と涼に確認を取る。が、どちらも言った覚えはないと、首を横に振った。

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