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Just the way it is ⑱
「それより、アキちゃんに渡したいものがあるんだけど」
「え?」
「はい、これ」
そう言って、黒埼が何か細長い箱のようなものを晃良に差し出した。綺麗に包装されて、シンプルなリボンまでかかっている。
「どうしたの? これ」
「どうしたって、誕生日じゃん、アキちゃん」
「あ……」
そう言われて、今日自分が誕生日を迎えていたことを思い出した。そういえば、今朝も尚人と涼に『おめでとう』と言われたような覚えがある。風邪で朦朧 としていたので、すっかり忘れていたが。
「……忘れてた」
「アキちゃん、自分の誕生日忘れたらだめだって。大事な日じゃん」
「こんなの……よかったのに」
「何言ってんの。祝うの当たり前じゃん。ほら、開けて」
「ん……」
黒埼に促されて包装を丁寧に開く。すると、晃良でも分かるくらい名の知れたブランド名が刻まれた洒落 た箱が出てきた。ゆっくりと箱の蓋を開ける。
「時計……?」
「そう。まあまあいいとこのやつ。アキちゃんに似合いそうだったから」
「いや、俺、こんな高級なの、似合わねぇだろ」
「アキちゃんはこれくらい価値がある」
「はあ……」
「それに、ちょうど壊れたみたいだし。良かったんじゃないの?」
「え??」
晃良はベッドサイドに置かれていた自分の腕時計を手に取った。正面からヒビが入って完全に針も止まってしまっていた。おそらく、今日、不審者と接触した際に、うっかりどこかにぶつけてしまったのだろう。
「ほんとだ……」
自分にしては奮発して買った時計だっただけに残念さはあるけれど。このタイミングで壊れてしまって、こうして新しい時計が手に届いたということはそういう運命だったのかもしれない。
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