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Just the way it is ⑰

 黒埼には聞きたいことがいっぱいあった。伝えたいこともいっぱいあった。でもどれから話せばいいか分からなかった。伝えたいことはあるけれど、それを伝えたいかどうかも分からなかった。とりあえず、一番気になっていたことを聞いてみることにした。 「黒埼……」 「ん?」 「……久しぶりだな」 「そう? だけど、先月会ったじゃん。だいたい1ヶ月おきぐらいに会ってるから、ちょうどそれくらいじゃない?」 「だけど……いつもはなんやかんや言ってくるだろ。メールとか電話とか」 「……アキちゃん。もしかして寂しかった?」  黒埼が分かりやすく嬉しそうな顔をして聞いてきた。 「……寂しくはなかったけど……心配した」 「心配?」 「……この前のことで、やっぱり黒埼を傷つけたのかなって」 「…………」  じっと黒埼の顔を見た。 「……もう、二度と会えないのかと思った」 「…………」  しばらくお互い見つめ合っていた。黒埼がふっと笑って口を開いた。 「そんなわけないじゃん。なんで、俺がアキちゃんの前から消えなきゃなんないの。せっかく再会したのに」 「だけど……」 「ここずっと連絡できなかったのは、半監禁状態だったから」 「は? 監禁?」 「ん。最近アキちゃんに会いに仕事ほっぽらかして日本来てたら、ボスにめちゃくちゃ怒られた。今、1個大事な実験してんだけど。それがちゃんと終わるまではどこにも行かせないって言われて、携帯も俺のPCも取られて、実験室に閉じ込められてた。見張り付きで」 「……そうだったのか」 「そう。今回ばっかりはジュンもお手上げだって、助けてくれないし。しょうがないから凄え頑張っていつもの半分以上の早さで実験終わらしてやった」 「……そしたら、本当に……愛想尽かしたわけじゃないんだな?」 「当たり前じゃん」  黒埼が何言ってんの?というような表情で晃良を見返した。 「でもまあ、びっくりしたけど。やっとアキちゃんに会えると思って家来たら、アキちゃん倒れてるし」 「……驚かして悪かったな」 「ん? 全然いいよ。ハアハア言ってるアキちゃん、エロかったし。裸も見れたし」 「は? 裸?」  そこで初めて、自分がスーツ姿からTシャツと短パン姿へと変わっていることに気が付いた。じろりと黒埼を見る。 「お前、変なことしてないよな?」 「はあ? するわけないじゃん。病人相手にそんな欲に任せて変なことなんてしないって」  アキちゃんアルバムに1枚写真増えたけど。という黒埼の小さな呟きは、黒埼が急にごそごそと隣に置いてあったらしい自分の鞄をまさぐりだした音にかき消されて晃良の耳には届かなかった。

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