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Out of control ①

 さわさわと何かが触れている。くすぐったいような、ぞわぞわするような感覚が深い睡眠を少しずつ浸食していくが、不思議と不快な感じはしない。  瞑っていた目をゆっくりと開ける。誰かが自分の上に覆い被さっているのが分かった。薄暗い部屋の中で、ぼんやりと影となって浮かび上がる。ぎゅっと抱き締められているようだった。左耳がくすぐったい。そう自覚した途端、それがその誰かの舌で舐められているからだと気づいた。  ヒョウちゃん?  自然と思い当たる名前を思い浮かべる。くちゅっと音を立てて耳の中に舌を入れられて、思わずびくりと体を揺らした。その反応に気づいたその影が、肩越しに埋めていた顔をゆっくりと持ち上げた。  あれ。  その顔は確かにヒョウちゃんだった。けれど、いつもの少年の面影はなく、随分大人になったヒョウちゃんだった。  今夜の夢はいつもと違うな、とぼんやりと晃良は思う。前月、風邪をこじらして熱に浮かされる中見た黒埼との昔の夢。あれ以来、よく昔の2人の夢を見るようになった。しかし、見るのは決まって、ベッドの中で幼い頃の2人が抱き合っている夢だった。それが実際に起きたことなのか黒埼本人に確認したことはないが、真実だと晃良の中の何かが確信していた。  だから、こんな風にベッドの中で抱き合う夢はもう珍しくもなんにもないのだが。大人になった黒埼が現れるのは初めてだった。  ま、いっか。  口角を少し上げてじっと晃良を見下ろす黒埼を見て思う。どうせ夢なのだから。たまにはこんなこともあるだろうし。昔の記憶と今の記憶がごちゃまぜになったっておかしくはない。現実ではないなら、このまま自分の欲に従ってもいいのではないか。夢の中なら、自分の気持ちを抑えなくても。  晃良は黒埼に向かって軽く微笑んだ。すると、黒埼が笑みを浮かべてキスを落としてきた。何度か唇を軽く押し合った後、するりと黒埼の舌が口内に入ってきた。それを迷うことなく受け入れる。優しく絡め合っていると、体が熱くなってくるのを感じた。

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