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Out of control ③ ★

「ん……」  黒埼が小さく声を上げた。そこでまた晃良は気づく。そういえば。再会してからは黒埼にやられてばっかりで、黒埼が気持ち良くなっているところは一度も見たことがないなと。  その事実に何か引っかかるものを感じたが、今はそれどころではなかった。仰向けの体勢のまま口で愛撫するのは結構疲れる。まあ、腕で晃良が潰れないように体を支えている黒埼も辛いだろうが。  しかし、夢のはずなのに疲労感がやたらとリアルなのはなぜだろう。仕事が忙しくて疲労が溜まっているのが夢に影響しているのだろうか。しかし、仕事が忙しいのはいつものことで、今が特別忙しいわけでもないのに。  うだうだと色々と考えつつも、口の動きは休めず舌も時々使いつつ上下に愛撫を続ける。空いている手で黒埼の丸い部分も優しく包んだ。 「アキちゃん、もうイく」  頭上から黒埼の声がした。ならば、ラストスパートだな、と口の動きを最大限に早める。 「んっ……」  黒埼が声を上げたと同時にどくん、と黒埼のモノが波打つのを感じた。生暖かい液が口内に広がる。口をすぼめてゆっくりと口を外していく。最後に舌で舐め取って綺麗にしてから口を離すと、こくん、と黒埼の欲を飲み込んだ。  なんか……苦いんだけど。  夢って味覚もあるんだったか? 「…………」  ここまできて、何かがおかしいとようやく気づいた。さっきは、頭がほとんど働いていなかったので夢だと思い込んでいたが。よくよく考えたら、夢の中で起こされたのではなく、自分は確かに『起きた』のだ。眠りから。    嘘だろ。  急いで仰向きのまま這い戻る。布団を出た途端、黒埼の悦の入った顔とぶつかった。 「アキちゃん……口でするの上手くなったな。昔は歯がよく当たって正直上手いとは言えなかったけど」  そういやらしい顔で言われる。晃良はその憎たらしい黒埼の両頬を両手で摘まんで思いっきり捻った。 「いっったぁっ!! ちょっ、痛いって! アキちゃんっ!! なにすんの!!」 「……痛いか?」 「だから、痛いって言ってんじゃん! 離してって」 「……やっぱり夢じゃないのか」  両手を離しながら、今したことは全てリアルだったと自覚する。自覚した途端。 「うわああっ!」  覆い被さる黒埼を思いっきり突き飛ばして、ベッドから飛び出した。十分な間合いを取ってから電気を点ける。ちらっと床を見ると、黒埼がベッドに入る前に脱いだらしい服の上下が落ちていた。  自分のしでかしたことが恥ずかし過ぎて、自分で自分を殴りたい気分だった。よりにもよって、リアルな黒埼に素になってしまった。

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