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Out of control ⑬
会計を済ませて店を出ると、急いでトイレへと向かった。
「あれ? 晃良くんじゃん」
名前を呼ばれ、トイレの洗面所で手を洗いながら頭を上げる。涼が買い物袋を下げてトイレに入ってきたところだった。
「涼」
「まさか会うとは思わなかったわ。黒埼くんは?」
「先に車で待ってる」
「どこに停めた? 車」
「その一番近くんとこ」
「俺も。そしたら車んとこまで一緒に行こ」
「買い物終わったのか?」
「うん。買うもんほぼ決まってたから」
涼が用を済ませるのを待って一緒にトイレから出る。涼がちらりと晃良の買い物袋を見た。
「それ……晃良くんが買ったの?」
「え? ああ……まあ……」
「ふーん、そっか」
ニヤニヤした顔で見てくる涼を無視する。
「急ぐぞ。黒埼待たせっぱなしだから」
そう言って、急ぎ足で自動ドアを抜けて駐車場に出る。車もまばらにしか停まっていない中、乗ってきた車へと足を進めるが。
「あれ?」
そこに、黒埼の姿は見えなかった。涼が追いついてきた気配が後ろからする。
「黒埼くんは?」
「さあ……」
きょろきょろと周りを見回したその時。車から2、3スペース離れたところに停まっていた黒塗りのバンが急発進した。バンが停まっていた地面に何かを見つける。晃良は小走りに走ってそれが何かを認めた途端、ぞくっと背中が凍り付いたように感じた。
それは、黒埼の財布だった。
「涼」
振り向いて、涼を見る。真剣な表情の涼と目が合った。
「見たか? 番号」
「見た。尚人に連絡する」
そう言うとすぐに携帯を取りだして電話をかけ始める。
「はよ出ろ」
なかなか応答しない尚人に苛々した口調で涼が呟いた。どくどくと心臓が激しく波打ち始める。
黒埼。
取り乱しそうになる気持ちを必死で抑え、次に取るべき行動を考える。
おそらく。状況からすると、黒埼は何者かに拉致された可能性が大きい。ふと、黒埼と別れた直後にすれ違った男たちを思い出す。晃良は心の中で思いっきり舌打ちをした。仕事モードではなかったとはいえ。こんな判断ミスは許しがたい。あの時、少しでも気になったのなら尾行して確認したら良かったのだ。
もし、黒埼の身に何かあったら。晃良がぐっと拳を握った。微かに自分の手が震えているのを自覚する。自分のせいだ。
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